蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

【仮面ライダー映画2021】よかったところ

12/17公開『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』を観ました。

そもそもは「オリラジ藤森さんがベルトとスタンプの声を当てている」という理由で観始めた今期の仮面ライダー
まさか成人してから仮面ライダー映画を生まれて初めて観に行くことになるとは。藤森慎吾は俺の世界を拡げてくれる……

仮面ライダー50周年を記念する映画だけあり、仮面ライダーシリーズへのリスペクトが随所に見える作品でした。

過去50年から受け継いだものを、未来の50年に託す。これまで仮面ライダーの継承に関わった人々、そして仮面ライダーに憧れたもっと大勢の人がいる。
それらを意識して作られていると感じました。

「家族の絆」と「歴史の継承」の2大テーマをこれでもかと強調しつつ*1、派手派手なお祭り要素も盛り込まれていて、最後まで飽きない映画でした。

バイスしか知らない人間でも十分楽しかったですが、過去作を知ってれば解像度はもっと上がるはず。
特にセイバーを観てた人なら、キャラクター性や人間関係がわかってより楽しめるだろうな……と思いました。

以下、ネタバレを含む感想(よかったところ)です。





研究者の業

百瀬龍之介とジョージ狩崎、ふたりの研究者の業が描かれてたのが興味深かったです。

ショッカーの所属研究者にも独自の価値観があった、ってコンセプトがいい。
悪の組織に心酔したり洗脳されたりしたわけではなく、「ここでなら外部機関では不可能な(倫理に反する)研究ができる」を理由に百瀬はショッカーを選んだ。人間くさくて、同時にマッドな研究者の業。

百瀬のやってた「神をも恐れぬ領域」の研究、たぶんヒトDNAの編集ですよね。
「クリスパースタンプ」は明らかにゲノム編集を意識した名称だし、偉人の遺伝子情報が組み込まれている。何より50年前には怪人を作りまくってたし。


狩崎パパが開発したバイスタンプは古生物や現生動物のゲノムを利用していたけれど、百瀬は一戦を越えて人間の遺伝子に手を出してしまった。

狩崎も百瀬もマッドサイエンティストには違いない。ギリギリを踏み越えて外道に堕ちてしまったのが百瀬、たまたまそうならずに済んだのが狩崎、ということかも。

これは狩崎の方が倫理的とかではたぶん全くなく、単に彼はヒトに興味がなかっただけだと思います。
狩崎の研究倫理も間違いなく終わっている。クローンライダーを嬉々として収集する人なので……

狩崎の一存で次々にクローンライダーアーマーが選ばれる場面、あれ着せ替え遊びみたいで狩崎は超楽しかっただろうな……

印象的なアイテムの使い方

アイテムを象徴的に使うのが上手いのも見どころ。

「新幹線の切符」は時代背景を反映させつつ、親子の思い出をドラマチックに見せていました。
ベタな手法ではありますが、分かりやすくて効果的。

「遺伝子」も上手いモチーフ。
ひとつは家族内で継承される血の象徴として、ひとつはコピー・改変して利用できるデータとして。

この両義性で「家族の絆」と「歴史の継承」、「研究者の業」がひとつながりに接続されているのが非常に綺麗です。

1号へのリスペクト

仮面ライダー1号の登場シーンが非常に昭和っぽかったのも大好きでした。なるたけ歴史を改変しないように留意している……

本郷猛役の藤岡真威人さん、マジで演技の濃さが藤岡弘のそれ。ご子息なので当然のように再現が上手い。

怪人との戦闘シーンも昭和の風が満載。
ロケ地が広大な採石場なのも、ライダーと怪人のアーマーが今よりシンプルで布地メインなのも、カットの切り替わり方や「とうっ!」と言いながら宙返りジャンプする演出も。

見たことないはずの無印がなぜか懐かしい。
CGや電子音をふんだんに駆使した映画に、昭和完全再現のシーンが挿入されているのが妙に面白くて最高だと思いました。

それぞれに役割がある

ストーリーの都合上、フォーカスされるのは百瀬親子とセンチュリー。セイバー・リバイスの両陣は彼らをサポートする役回り。

映画オリジナルのキャラが主題になるのは、子供向け長寿番組の王道でしょうか。ドラえもんアンパンマンの映画もそうですよね。

とはいえ一輝は主人公として物語を力強く推進していくし、バイスは「第4の壁を越えて観客にめちゃめちゃ喋りかける」ことで個性を発揮。セイバーの主人公・飛羽真は憧れの先輩ポジションで非常に頼りになる。
サブに甘んじているわけではなく、各キャラの良さが出ていました。

加えて、若い男性だけではない、幅広い人材が活躍していたのもよかったです。女性ライダーがバリバリ戦っていたし、センチュリーに変身した百瀬親子はかなり年齢層が高め。*2


この映画のキャラクターは、仮面ライダーを支えてきた人々をモチーフにしていると思います。

本郷猛と百瀬龍之介はおそらく「仮面ライダー1号を生み出した人々」の象徴。百瀬秀夫は「あの時仮面ライダーに夢中だった、そして今では仮面ライダー好きの子を持つ親」。
ジョージ狩崎は「生涯仮面ライダーを愛し続けるマニア」であり、愛が高じて制作に関わる道を選んだファンでもある。

作る人がいて、次世代に受け継ぐ人がいて、大人になっても愛し続ける人がいるから仮面ライダーの歴史がある。その重みにグッときました。

*1:悪人にも守りたい家族がいる、という描き方は良かったが「子を愛さない親なんていない!」と断言した百瀬父には若干危うさを感じた

*2:戦うババア成分が足りないと感じた方には『マッドマックス 怒りのデスロード』を強くおすすめします。最高の映画です