蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

ディズニーのソシャゲ『ツイステッドワンダーランド』がヤバい

※本記事はnoteから移植しました。

『ツイステッドワンダーランド』は昨年3/18にリリースされたディズニーのソシャゲ。
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.aniplex.twst.jp

世界観

まず何がヤバいかって世界観が良い。
「ツイステッド」の名の通り、ねじれた世界が展開される。ディズニー映画の悪役(ヴィラン)が、この世界においては尊敬されるべき偉人『グレートセブン』になっているのだ。ディズニー映画本編では悪役として排斥されたキャラクターたちが、このねじれた世界では歴史に残る大人物として称えられる。

個人的には『ライオンキング』の伝承が面白かった。悪役のスカーが「出自のハンデを乗り越えて王位を勝ち取り、嫌われ排斥されていたハイエナたちを差別せず仲間にした」と称えられているのだ。確かにスカーは、捉え方によっては被差別階級を登用した柔軟な人物とも言え、どことなくエピソードが曹操に似ている。

同時代の人間と後世の人間で、あるいは主人公サイドと悪役サイドで見方が変わる、という相対化の視座を感じて面白いと思った。

ただ今のところ(注:昨年3月時点)『ツイステ』のテーマはまだ掴めていないので、そこは追加シナリオを待ちたい。
ヴィランにも一面の美徳があり、ねじれた世界では彼らが称えられているかもしれない」的なテーマなのか。それとも、「悪役が成敗されなかった世界線では彼らが偉人になっているが、それでも彼らは否定すべき悪なのだ」という帰結に持っていくつもりなのか。

魔法学園もの

物語の舞台は魔法学校ナイトレイブンカレッジなのだが、誤解を恐れずものすごく大雑把に言うなら「ハッフルパフのいないホグワーツ」である。……だいぶ語弊がある気はする(し、ハッフルパフのいないホグワーツはだいぶいやだ)が、ハリポタを履修済みなら理解がスムーズなのは間違いないはず。

キャラクターデザイン

これは完全にみんなビジュアルが良すぎる。しかも主従・正反対の双子・幼なじみ・兄弟などの関係性からチャラ男・料理好き・ナルシスト・オタクといった属性まで、信頼と実績の要素をこれでもかと詰め込んでくる。そして、キャラクターそれぞれが何かしらの事情を抱えている。これまた王道の要素だ。

いろいろ網羅しているので、ほとんど誰でもたぶんひとりはハマるキャラがいると思う。ちなみにわたしはジャミルが好きです。

リズミック

このゲームには「リズミック」というリズムゲーム要素があるのだが、これがややこしい。ハードモードが難しすぎる。といってもハチャメチャな連打が必要なわけでもなく、たぶん『太鼓の達人』でこの譜面なら初級者でもクリアできるレベル……なのだが、画面が見づらい。

特に紫のリズミック(薔薇の樹を塗る回など)のシステムは視覚的な複雑さが顕著。

  • ノーツ(音符)が画面に出てから、押すべきタイミングまでにタイムラグがある
  • タイムラグが完全に一定ではなく、ノーツごとに異なる
  • ノーツ中央に書かれた数字の順番にタップする必要があるのだが、一度に7つくらい出てくる
  • ノーツ、数字、タイムラグを示すリング、動く背景や光など視覚的要素が多い

という鬼仕様。

特に、数字の順番にタップするやつは人間工学への反逆かと思うレベル。チンパンジーが認知系の実験でやる「画面に一瞬だけたくさん数字が表示され、それを数字の順番通りにタップしていく」やつをやっている気分。本来ヒトにはあまり向いてないタイプの課題だ……

いや、ポジティブに考えよう。これだけ難しい課題をゲームとしてこなしていれば、知らないうちに視覚的・聴覚的な認知能力が鍛えられるかもしれない。チンパンジーを見習おう。

シナリオ

キャラクターはそれぞれの事情を抱えているので、シナリオも必然的に、キャラクターの事情をフィーチャーしたものになる。シナリオの筋はかなりストレートで分かりやすく、サクサクプレイしながらキャラクターの絆を楽しめる。
個人的に気になっているのが、シナリオの結末だ。これはネタバレになってしまうのだが、現時点で公開されているシナリオ(注:2章まで)においてはキャラクターの葛藤が描かれるものの、それは最後まで全く解決されない。

彼らの抱える問題は根本的には解決していないし、葛藤は緩むものの精神的な課題も手をつけられないまま。彼らは自分を抑圧する人物への対抗策を見つけていない。ただ、自分を心から心配して大切に思ってくれる仲間の存在に気付き、キャラクター同士の絆が深まるという救いが確かにある。
ジュブナイルものとしては確かに良い落としどころだと思う。だけどある意味、「外は理不尽で抑圧的で僕らにはどうしようもないけど、寮の中は安心できる場所」みたいな構図になってしまっている。仲間のいる学校は、彼らにとってシェルターとして機能しているのでは……

この、現実の問題への対抗策には言及せず、葛藤の表出と仲間の支えに解決を見いだすスタイル。何か狙いがあってやっているのだとしたら、これからのシナリオがめちゃくちゃ気になる。

もしかしたら、ソシャゲの性質上の制約でそういうシナリオになっているだけの可能性もあるが……。進行度がプレイヤーによってバラバラな性質上、「このシナリオの前後でキャラの性格が激変」みたいな展開を入れづらいため。

そこも今後はっきりしてくると思うので、ぜひとも見守っていきたいです。