蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

「歴史は流れで覚えろ!」の『流れ』っていったい何なの

※本記事はnoteから移植、加筆修正したものです



「歴史は流れで覚えろ!」ってアドバイス、聞いたことはありますか。
私はあります。

歴史が得意な人に勉強法やコツを聞くと、言ってくれがちな一言だと思う。
(ここでの「歴史」は受験科目としての日本史・世界史で、専門教育・学術研究レベルは含まない)


なるほど素晴らしい教訓が一文に凝縮されている。「ズバリ!」という効果音を付けたくなるような寸鉄である。

しかしこの明快で一見わかりやすいこの言葉、ひとつ引っ掛かることがある。
『流れ』とはいったい、何を指すのだろうか?


歴史の『流れ』って何?

歴史の『流れ』なるものの正体を考えてみよう。
それは、おおむね以下のように説明されることが多い。

  • 出来事同士の因果関係で覚えよう!
  • 暗記ではなく、ストーリーで覚えよう!
  • 歴史背景を踏まえて、「なぜそうなったのか」を理解しよう!

なるほど!
『流れ』とは出来事同士の因果関係であり、大きなストーリーである。つまり歴史を覚えるには、個々の出来事が「なぜそうなったのか」を理解しながら勉強していけばいいんだな!

そうか……
なるほどな……

……それって、とても難しいことではないだろうか?



出来事の因果関係を踏まえてストーリーを形成する(=『流れ』を覚える)には、かなりたくさんのハードルをクリアする必要がある。

  • 個々の出来事の内容を正確に理解できる
  • 個々の出来事の内容と、出来事が起きた順番を間違えずに記憶できる
  • それぞれの出来事のつながりや要因を読み解き、因果関係を推定する
  • たくさんの出来事を統合して、一貫したストーリーを組み立てる

確かにこれだけの課題をこなせるくらいなら、その人は歴史の勉強ができるだろう。
つまり、歴史を『流れ』で覚えられる人は、歴史が得意だと言える。

しかしこれらは、歴史が得意な人だからできるのではないか。
または、歴史が得意になった結果、因果関係やストーリーを高い精度で組み立てられるようになるのではないか。


少なくとも歴史が苦手な初心者に、「まずはこれさえ覚えればよい」として授けるタイプのアドバイスではない気がする。初手でやるには高難度すぎるからだ。

むしろ暗記さえあやふやな初心者が『流れ』を自分で組み立てようとすると、因果関係を誤読して覚えてしまう弊害が大きい。


得意な人のアドバイスってハードよね

これは余談だが、印象的なエピソードなので聞いてほしい。
京大の入試に2回合格した先輩の話だ。

国語が得意な彼に「国語の問題の解き方、コツはありますか?」と尋ねてみると、彼は答えた。

「国語なんて問題文に答え全部書いてあるやん」

その場にいた理科系学生たち(現代文が比較的苦手)は「これだから天才は」「得意な人には苦手な奴の気持ちがわからんのや!」と半ば呆れながら彼の能力を称えた。



私にとっては、「歴史は流れで覚えろ」も、これと似たアドバイスに聞こえる。

もちろん歴史は因果関係を理解して覚えることが望ましいし、
国語は問題文に答えが書いてあるに決まっている(文章に載ってないことを問題に出すはずがない)。だからそれを読み取れば点が取れるし、書いてないことを勝手に思い込んではいけない。


ゆえにその主張は間違いなく正しいのだが、それはあくまで「得意な人はそういうことができる(だから得意)」という話。
言うなれば最終目標、もしくは理想像だろう。

苦手な人や初心者がまずやるべき課題のように教えるのは、ちょっと違うのではないか。


初心者が覚えるべき『流れ』って何?

ここで、「歴史は流れで覚えろ!」に戻ろう。

出来事の因果関係とストーリーを正確に覚えるのが難しいとしたら、歴史が苦手な人は、まず何を覚えたらいいのだろうか?

歴史が苦手な(のに大学入試を日本史と世界史で受けるはめになった)自分が、色々考えてやってみてたどり着いた、暫定的な結論はこうだ。



「とりあえず大まかな区分単位で覚える」



大ざっぱに言えば、まず以下の区分をなんとなく頭に入れる。(正確な理解ではないので注意してほしい)

①原始時代
初めは狩猟採集生活してた。水稲農耕などが入ってきて貧富の差や争いが生まれ、小国が乱立した

②古代
地方豪族をヤマト政権が支配していった
天皇が国家体制を整えた

③中世
荘園制が成立
武士が力を増していった

④近世
武家政権の支配(全国的かつ中央集権)

⑤近代
開国・大政奉還明治維新など
新政府が成立

⑥現代
第二次世界大戦以降

個々の出来事も年号も(ほぼ)出てこない、あまりに大まかな区分と、大ざっぱな特徴。これをふんわりイメージする(覚えなくてよい)



その次に、時代区分と年代をちゃんと覚える。

縄文時代(1万年余前~約2500年前)
弥生時代(紀元前4世紀~紀元3世紀くらい)
…etc
各時代が覚えられたら、時代の特徴、偉い人、大きい出来事、土地制度などを時代に結び付けて、時系列で覚える。


この手順を踏むと、歴史の『流れ』もかすかに、本当にかすかに見えてくる。


私は『流れ』を勘違いしていたのか?

ここまで書いて思ったが、「時代区分の年代(順番)と内容」もまた、歴史の『流れ』と呼べるのではないか。

それらを覚えることは、国語でいう「起承転結」や「序論・本論・結論」の区分を理解し、文章を切り分け、各パーツの主旨を読み取る作業に近い。
この方法なら、いきなり文章全部の内容や因果関係を読み取れと言われるより、やりやすい。


私がまず覚えるべきだった歴史の『流れ』とは、実はそういう意味だったのではないか?
私は歴史の『流れ』のことを、あまりに難しく勘違いしていたのかもしれない。


私がイメージしていた『流れ』

藤原不比等は娘を天皇に嫁がせ政権に接近し、その後皇族の長屋王が政権を握るが、不比等の子ら4兄弟が危機感を抱いて長屋王を策謀にはめ、しかし4兄弟は天然痘で次々亡くなり藤原氏の影響力は一時衰え、続いて皇族出身の…………


私に本当に必要だった『流れ』

飛鳥時代(6世紀末~8世紀初)
奈良時代(710~784年)



この方法が歴史苦手人間みんなに適するわけではないにせよ、少なくとも「因果関係やストーリーで覚えようとして挫折してきたけど、この方法なら頭に入る!」という人はいると思う。


以下に当てはまる人にはおすすめできる方法かもしれない。

・いきなり細部の説明をされると混乱する
・最初に全体像が見えると安心
・まず結論から話してほしい