蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

かが屋の好きなコント31選

※本記事はnoteから移植しました


かが屋にハマりました

『終電逃しちゃった…』からハマりました。

せっかくかが屋のネタ動画を見漁っているので、備忘録として面白かったコントをまとめておきたい。ハマりたてのひよっこのうちに、新鮮な気持ちを。直接的なネタバレはなるべく避けますが、保証はできません。ご注意ください。

1.面白い男の人が好き 改

かなり好きなコント。前半と後半で空気の重さが全然違う! かが屋は雰囲気のコントロールが抜群に巧い。

賀屋さんの演じるまゆちゃんが良すぎて、ちょっと癖のあるとこまで含めて猛烈に可愛い。こんな友達がいてくれたら絶対楽しい……!

私はこのコントに「コミュニケーションを諦めない」というコンセプトを勝手に見いだし勝手に感動していた。もはや「あなたの勇気が、空気を変える。」ってACジャパンのCMになってもいいレベル。それはさすがに言いすぎか?
そして、オチがかわいい。

2.大事な話って……

ふたりの関係性が二転三転するのが面白い。こういう関係かなーと予想して見ていたら、続く展開で大きく裏切られる。その度に、これまでのやりとりってそういう意味だったのか!と驚かされる。伏線回収の快感が何度も味わえる良質な裏切り。

見え方が何度も変化するので、見たあとに頭の中で反芻したくなるコント。もう一度最初から見返したくなるコントであり、展開を知ったうえで見返したときにニヤニヤできるコントでもある。動画で上がってて、何回でも再生できるのがありがたい。

加賀さんと賀屋さんの激しい動きが新鮮。語彙があんまりない反論も含めて、思わず声出して笑ってしまう。当人はわりと本気っぽいんだけど、あんまり殴り合いとかしたことなさそうなふたりなので、ちょっと可愛く見えるんですよね。
そして、オチがかわいい。


ちなみに同タイトルの別バージョンもあるのだ。
https://youtu.be/XC6T0yu-Xb4

「同じ冒頭から違う展開に派生していくやつ」大好き。両方見比べると全く違う読後感が得られるのが楽しい。

3.シャーロンの日記

落語っぽい、いわゆる「粗忽者」な感じの登場人物が面白い。善良なんだけど軽率で、ミスを取り返そうとしてわやくちゃになっていく。加賀さん、ネタによってこんなに喋り方や雰囲気変わるのか……。
ネタは、オタクっぽい人が見れば「それな」と共感できて3割増しで面白いので、何かしらのオタクは見てください(本でもお笑いでもジャンルは問わない)。自分がうっかり者でオタク気質な人間なので、どっちのキャラの気持ちもわかる。

そしてかが屋のコントは、見えない人がそこにいるように思えてくるからすごい。ふたりの視線や表情、返答から、その向かいに座る人の影が浮かび上がってくる。賀屋さんの連れ合いがどんな表情をして何を喋っているのか、説明がないのに見えてしまう。

たぶん、観客の理解力や想像力とのキャッチボールが上手いのだ。見ていてだんだんわかる状況なら説明しない。でも置いてきぼりにしないよう、状況や展開を読み解ける要素は揃える。バランスが絶妙。

4.合コンの誘い

私がこれまでに見たネタは劇場ライブ中心だからか、お客さんの想像力を高めに見積もったコントが多い気がした。

例えば『合コンの誘い』。
かなり会話が進むまで、何の話題か直接的なワードが出てこない。観客側があるあるを想像して初めて理解できる。ただし後のほうにキーワードを入れることで、答えにたどり着かなかった人にも上手くフォローを入れている。

わざわざライブを観にきたり、ネタ動画を探したりするお客さんを信じてるからこそ、この構成にできるんだと思う。お客さんもちゃんと早めの、たぶん狙い通りのタイミングでウケてるのですごい。TVで披露するネタだと時間の制約もあるし、またチョイスが違うのかもなーと思った。

5.数学の授業

加賀さんが男子中学生、賀屋さんが数学の先生。コントとしてもちろん面白いし、ほぼ賀屋さんしか喋ってないのに生徒たちの性格まで見えてくる凄い完成度。

しかもこの先生、教師として優れてる! 生徒まんべんなく当ててるし、不正解も「製作者がしてほしい間違い方、つまり考え方は合ってる」とフォローするし、さっき不正解だった子に再度チャンスをあげてる。
生徒みんなに目を配って、生徒の行動や反応をよく見ている。生徒がどこまで辿り着いて、どこにつまずいてるかを把握してるから、的確なヒントを出せる。
思春期の中学生に恥をかかせないことの重要性を理解しているし、的確なリアクションでよいフィードバックを与えている。生徒は安心感を得られそう。
だからこそ「たぶん数学があまり得意じゃない生徒でも、積極的に挙手する」という状況が自然に感じられる。技量の演出が、設定に説得力を持たせている。

6.合唱

この空気めっちゃわかる……。ちゃんとやり過ぎて裏目に出てる人、誰でも一度は見たことあるのでは? 中学生ってなぜか、斜に構えてる方がかっこよくて真面目にやってる方がダサい的なノリだったよな。

恥ずかしくていたたまれない感じで進むかと思いきや、展開は予想外の方向に! コントなのに思いっきり心揺さぶってくるところが好き。

7.文化祭

情動の描き方が本当に見事。加賀がなぜ悲しそうな顔をしているのか、一切説明はないんだけどちゃんとわかってくる。
孤独と不安におびやかされてる間は他のこと目に入らなかったのが、安心を得た瞬間周りがよく見えるようになる。なんならふざける余裕も出てくる。めっちゃわかるなその情動。
感情の移ろいのコアを捉えてわかりやすく表現しているから、リアリティとコミカルさが両立してる。

あと賀屋がめっちゃいい子……クラスの空気とかひとりひとりの性格をよくわかってて、さりげなーく上手くいくようサポートしてくれる人。絶対加賀の親友じゃん……。このタイプがクラスにひとりいると、クラスの空気がめちゃめちゃ良くなるよね。

 
かが屋の学校ネタ、思春期の学生たちの「恥ずかしい思いをしたくない(でも、それは大人から見るとほほえましい)」がベースにあるのかな。
だからこそリアリティがあるし、見ていてちょっと懐かしくなる。現役の中高生が見てもあーわかるって思うんじゃないだろうか。

8.プレゼントの話

隣の席の2人組が、プレゼントの話をしている。イヤホンの音量をさりげなくめっちゃ下げるとこ大好き。現代の聞き耳の立て方って確かにそれだ……

そして加賀さんのキャラが良い。困惑してるのかと思いきや、案外はっきりダメなことはダメって言う。たぶんこの人お人好しなんだろうな……。賀屋さんほぼそのままなのに、動作と喋り方で大人の女性に見えるのですごい。
「そんな展開になる?」って意外さを、細かい描写のリアリティがうまいこと「ありそう」なラインにしている。

9.喫茶店 (2018.7ver)

これは自分も経験あるやつだ。押しボタンが席にないタイプの飲食店あるある。調子のいい店員さんが他のお客さんと喋ってたりすると、なおさら呼べないよね。
このなんとも言えないオチが好き。いろいろな感情がこもっている。

10.定食屋

アド街を見た」から始まるコント。始まりの設定自体はよくあるものかもしれないけど、展開はかが屋ならではだと思う。誰にも何の悪意もない、むしろ善良だったり親切だったりするのに、何事もままならない感じが良い。

途中の流れがめちゃめちゃ切なくて笑った。好き……。登場人物は「そりゃそうするよな」と思えるような理に適った行動を取ってるのに、勘違いや認識のずれのせいで切なくて笑える展開になっていく。

11.ガム踏んだ

この、全然争いたくはないのに引くに引けなくなっちゃった感、傍で見てるとニヤニヤしてしまう。これがニューヨーク(お笑いコンビ)なら最終的に人死にが出るやつだ。
そんな中で、加賀さんのアンガーマネジメントはさすが。一歩引いて冷静に状況を見直してみたり、「絶対いい一日を過ごす」と宣言したり。見習いたい。

かが屋のコントって、見てると人間関係の勉強になりそうなレベルのが多々ある。『終電逃しちゃった…』しかり『面白い男の子が好き』しかり。
コミュニケーションが上手い人、というかコミュニケーションを諦めない人が出てくるコントが多いからかな。彼女ら・彼らは辛抱強くやりとりすることで、場の空気を変えてみせる。ささやかな勇者だ。

12.しりとり

誰も何も悪くないのになんかよくわからないことになる」という物悲しさを書かせたらトップクラスの芸人、かが屋。慣れてないのにひねったことしすぎて、双方「?」ってなっちゃうのがかわいい。

13.友との別れ

友達が上京してしまうのが主題なんだけど、冒頭の「ビネガーじゃねえ」が独特すぎてずっと頭から離れない。
加賀さんの役、こういう対応の仕方しちゃう気持ちなんとなくわかるな……。照れ隠しってよく言うけど、人間はそれ以外の気持ちを隠すためにもふざけることがある。

友人への見栄や意地が素直な寂しさの表現を邪魔するんだけど、最終的にはそんなものより友達が大事なんだと伝わる。これもコミュニケーションを諦めなかったから、最後の展開にたどり着けたんだな。

15.イヤホン

2人のやりとりがめちゃめちゃ良い。賀屋さんの張り切り方も、加賀さんの口悪いけど親友大好きなところもかわいらしい。絶対仲良いよこの2人。
オチも良いよね……大変良いものを見た。

『友との別れ』で勝手に上京を決められたのが許せなくて寂しくて、つい過剰にからかってしまうのとか、『イヤホン』で賀屋さんが感傷的なことを言うと「キモい」と返してしまうのとか、加賀さん演じる男子のホモソーシャルっぽいノリがリアルだ。感情や感傷を表に出すのが恥ずかしいから、泣くのは格好悪いと思ってしまうから、「寂しい」って素直に言えないんだよね……。

そんな人が、ありのままの感情をあらわにするシーンにジンとくる。自分がダサく見えるかどうかよりも、相手に思いを伝えたい気持ちが上回ったのだ。「男だから」とか「格好悪い」とかそういう気持ちを乗り越えて、生身の心で、友達のために泣く。寂しい気持ちを相手に打ち明ける。ともに感傷にひたる。
相手にほんものの感情を共有できてほんとによかったね……って、見ていてやわらかい気持ちになってくる。

かが屋のネタは、登場人物の関係性が素晴らしいものが多いなーと思いました。

16.今から家行っていい?

とにかくスマブラをやりたい2人。裏事情を全然隠せてない加賀さんと、そのとばっちりで切ない目に遭い続ける賀屋さんが面白い。
加賀さんは賀屋さんのこと純粋に友達だと思ってるけど、電話の向こうにはそうじゃない人もいる……という構図が良い味である。

17.ポテトチップ

深刻な場面なのにお菓子が気になっちゃって仕方ないこと、確かにある。
そういえば自分も、真剣な会議の場でお菓子用意されてると「これどのタイミングで食べていいんだろう……?」ってめっちゃ考えてしまう。

18.大富豪

賀屋さんの優しい「鍵とかは締めんよ」が好きです。心がきゅんとする。
初めての彼女ができて調子乗りすぎるというあるあるを、こんな温かい、心打つコントに仕立てられるセンスに脱帽。

そして、友達同士の関係性の違いを描いてるところが興味深い。この人たちには人間関係が表面的で一辺倒なものじゃなく、繊細で復層的なものとして認識されているんだろう。
最近できた友達とどれだけ仲良くても、昔からの友達とはまた違うものね。

19.兄の秘密

こちらは兄弟の話。中高生~! 思春期~! なつかしい青臭さだ。そしてオチの賀屋さんのリアクションが良い。かなりかわいい。
~amazing kawaii brothers~

20.呼ばれ方

これめちゃめちゃ良かった……

未来の「呼ばれ方」を相談する2人。ハッピーで安心できて優しい世界で、見ていてあたたかい気持ちになる。2人の関係性がとても良いし、これからもっと幸せになっていくんだろうな。

台詞にも好きなものがたくさんあった。
珍しく(?)加賀さんも賀屋さんも地元の言葉を使っているのだけど、とても効果的だと思う。生身の言葉を使うことで、自然体でほんわかした空気が生まれていた。
観て絶対に損はしないので、優しい気持ちになるコントが好きならぜひ観てください。

21.バイトのシフト

これは良質な切なさと愛おしさ……
賀屋さんの喋り方や動作を見てると、なぜ加賀さんがみきちゃんを好きになったのかなんとなくわかるし、加賀さんの表情を見てると、どれほどみきちゃんを好きなのか、一緒にいられて嬉しいのかわかる。
具体的な言葉はない。でも期待を持たせる言い回しとかわいい喋り方で、あるいは豊かに変化する表情とそわそわした動作で、2人の性格と関係性がどんどん見えてくる。

そして、コンビニの什器の位置を完璧に把握してるのが何気にすごい。ここに時計があり、タバコの棚があり、食品用のショーケースがあり……と配置がだんだん見えてきて、想像上のコンビニが強度を増していく。
コンビニならではの設備を活かして笑いを取る、しかも全てマイムで設備は実在しない。そう考えると、かなり特別なことをやってる。お客さんの想像力を信じてるからこそできるネタだと思う。

何より好きなのはラスト。みきちゃんの何気ない言葉が加賀さんに刺さりまくるのがすごく良かった。オチの台詞の良質な切なさ……。

しかも何気に「向こうから告白されて」って打ち明けられてるのもつらいな……、これ「自分が勇気を出していれば、その座に自分がいたかもしれない」って事実を突き付けられてるってことでしょう。
あり得たかもしれない(訪れなかった)幸せを見せつけられてる男、最高に不憫でかわいい。好き……

22.自転車

シンプルな理由でこの場に巻き込まれた加賀さんの、なすすべの無さが面白い。こんなことになっちゃったら、もうそわそわしながら待つしかないよね。
賀屋さんを憐れんだせいで図々しめのお願いをされる加賀さん、まさに「庇を貸して母屋を取られる」お手本のようだ。
にしても誰かに・何かに巻き込まれてるときの加賀さんって、最高に輝いてるな。

23.電車にて

前半と後半における賀屋さんの態度、ギャップがえぐい。どっちにしろ「電車にいるヤバイ奴」には変わりないのに、ヤバさのニュアンスがめまぐるしく自在に移り変わっていく。演出うまいなあ……
しかもこのコントの賀屋さん、無表情になると本当に「そういうご職業の方」にちゃんと見えてくるのですごい。髪型と表情(と襟つきシャツ)だけでこんなにイメージ激変するものなのか……

途中の賀屋さんの「無」な感じもまたヤバい。冷静で常識的っぽい話し方なのに内容ひとつも筋通ってないところとか、喋ってるうちに勝手にオーバーヒートするところとか、制御できないヤバさだ。
そしてやっぱり、いやおうなく巻き込まれた加賀さんは光ってた。

24.待ち合わせ

こんな色んな要素が複合的に組み合わさったコント、どうやって思いつくんだ。どうやって作ったんだ。ワンアイデアでボケを変えていくのではなく、「笑いのコアとなるアイデア」自体が変遷していくところがすごい。
これたぶん、コンビふたりで話し合いながらネタ作ってるんじゃないかな。ひとりで台本書く方式ではこうならない気がする。いまの自分には到底作れない、というか真似することもできない形式のコントで嫉妬すら覚えた。


賀屋さんって、いわゆる「恋に恋する男性」を演じるのが上手い。キングオブコントのネタでもそうだったと思う。相手を好きすぎて周りが見えてない演技や、感情が昂って突っ走っちゃう演技が上手いからだろうか。
一方で加賀さんの演じる恋する男性は、「相手のことが好きだ、相手と一緒にいる時間が楽しい」という純粋な気持ちをベースに動いているように思われる。(ただし『大富豪』はわりと恋に恋してる感じだった)

同じ「恋する男性」でも、2人の生み出す人物像が全く違うのが面白い。かが屋のコントはあの配役だからこそ成り立っていて、2人の役を入れ替えたら別物のネタになってしまうだろう。その代替不可能性が、お笑いコンビによるコントの最大の特徴であり、長所だと思った。

25.シャンプー

先輩に向かってギリギリ許される悪口のボーダーラインを探るところが面白い。自分の例や比喩を駆使しながらうまいこと断ろうとするのだが、言葉のチョイスが絶妙に失礼で笑ってしまう。

先輩後輩の関係性がよくわかる。正面きっていじれるほど気さくな先輩ではないが、一緒にドラッグストアに行くくらい仲は良く、やんわり逆らえるくらいには言い分を聞いてくれる先輩なんだろうな。そしてたぶんこの人、後輩からほんのり舐められてるんだろうな。

26.遅刻

こちらは『シャンプー』と先輩後輩が逆。観客は全てを知った上で、この気まずさを俯瞰でニヤニヤ眺められる。
実際自分にこの状況が起こったら、楽しめるか引いちゃうかは人によって分かれそう。そう考えると、このコントの加賀さんはめちゃくちゃ良い先輩だな。

そして賀屋さんのヤバイ奴っぷりがとことん振り切れてて面白い。

27.お化け屋敷のバイト

正確に言えば雇い主とバイト。この2人の、なんともいえない力関係が面白い。
「週6~7で入ってくれるバイト」が相手だと確かにそうなるか……。雇い主側の葛藤を描いてるところが好きだ。
やんわりバイトを導こうとする気遣いの賀屋さん、加賀さんの「自分が出してると思ってたのと全然違う」あるある、ぽろっと漏れてしまう雇い主の本音。

これクレームが入るまでは施設サイド誰も気づいてなかったんだな……と思いつつ、お化け屋敷に入った客の気持ちを想像してみると笑えてくる。
「なんか今かわいいやついたぞ!?」


コントに出ない場面にまで想像を膨らませていけるのが、かが屋のコントの良さかもしれない。関係性の強度のおかげだ。

28.なんで?

別名「年金を払っていない女」。設定がパワフルすぎる。
カップルの間に突然「現実」が割り込んでくるインパクトがすごい。どれだけメルヘンに取り繕ったとしても、現実の重力からは逃れられない。将来の不安も年金未払いも消えてはくれない。(年金はたまに消えるけど……)

みきぴょんの「返ってくる保証なんてどこにもない」「80歳まで引き上げになるかもしれない」などの叫びは強烈で面白いけど、そこには生身の20代としての不安も反映されてる気がする。
対する彼氏の反論も「でもおじいちゃんおばあちゃんはそれで暮らしてる」といった方向。
ほんとは2人とも、年金制度を信じてないのがめちゃくちゃ生々しい。返ってこないかもと思いながら年金払っている20代、現実でも過半数じゃないだろうか……。

コントはコンプラ的に当然「年金を払うと決意する」流れになるのだけど、その論拠がわりとアクロバティック。よく考えたら、最後まで年金制度そのものに対する不信・不安は全く解消されてないのだ。でもこれは風刺の意図でやってるんじゃなくて、若者の価値観をナチュラルに反映した結果かもしれない。

ゴールが「根本的な不安は何も解消されてないけど、2人が話し合った結果みきぴょんが納得する」なのが面白い。どうにもならないことに折り合いつけなきゃいけないときって、確かによくあるよね……

29.シューティングゲーム

※現在は動画非公開
「2人がシューティングゲームをしてる」ことだけがわかっているスタートから、だんだん詳しい状況が判明していく。2人の関係性がわかってから改めて見ると、確かにそうだ……と思わされるゲーム中の細かい伏線。

この2人の関係の不安定さ、すごく印象に残った。一見何の問題もない順調な生活のようで、2人は常に不安を抱いたまま生きている。
「今はなんとか上手くいっているけど、ひとつのきっかけで何もかも喪うかもしれない」緊張感がずっとつきまとう。2人には、セーフティネットがないのだ。

そんな綱渡りみたいな生活に消耗して、いっそのこと日常よ崩れてしまえと思う臆病な切迫感も胸に刺さった。
この描き方、やっぱりすごいな……。2人のあいだの関係性だけじゃなく、2人と周囲(社会)の関係性も視野に入れて作ってるところ。

あと全然話変わるけど、めちゃめちゃ腰引けてる方が案外強いの笑ってしまう。

30.演技指導

コントの中で芝居をする、二重構造のコント。俳優と演出家。

わけわかんない設定だけどどっかの劇団では確実にやってそうなシーン、絶妙に既視感のある詰め方など、「見たことないけど、ありそう」の表現が上手い。
演出家は精神論に終始するかと思いきや、意外に演出方針が的確。ブレイクスルーのヒントも出すし、役者が要求に応えれば高く評価する。罵倒一辺倒じゃないのがリアル。この演出家、変にカリスマ性ありそう。

そして賀屋さんの演技がひたすらにヤバイ。演出をつけられるたび、どんどんヤバさを増していく。振り切れてるなあ。
シーンを繰り返すたび、じわじわと現実と虚構の境界線がぼやけていく感じにぞわぞわした。見ていて不安になってくる、この独特な視聴感が良い。

31.外では言えないこと

メタ的な発想のコント。お笑いコンビだからこそできるやつ。

しつこく「外では言えないこと」を話そうとする加賀さん、やめようとなだめるものの実は同感な(むしろ加賀さん以上に熱い)賀屋さん、両方かわいい。
加賀さんが熱く語ってたのは不安の裏返しだったのか、賀屋さんのフォローで安心した瞬間正気に戻るところが好きだ。

おわりに

以上で「かが屋で好きなコント」紹介を締めます。最後までお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。

やっぱりかが屋のコント、大好きだ。