蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

Trick or Treatのはなし

Trick or Treat』

日本語で言うと『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ』。

ハロウィンでお馴染みの台詞だ。おどしか?



季節の恒例行事の中では、飛び抜けて厄介な二者択一を迫ってくる台詞。

なまはげやクリスマスなど、
「悪い子のところにはなまはげが来るよ!」
「いい子にしないとサンタさん来ないよ!」
と脅しが使われる例は他にもあるだろう。

だがそういうのは大抵、大人が子どもを脅かす。



ハロウィンではその関係が逆転し、子どもが大人を脅す側にまわる。

「悪いことするとおやつあげないよ!」が、
「お菓子をくれなきゃいたずらするぞ!」に反転するのだ。

この構造の妙。



しかも「いい子にしないとサンタさん来ないよ!」は道徳的だが、

「いたずらするぞ」宣言、そこには何の正義もない。

脅してお菓子をせしめようとは、なんて野蛮なやり口。



子どもたちのそういった『ずるさ』が許容されるのが、ハロウィンの大きな魅力なのかもしれない。



だが、言われる側の大人たちは、きちんとお菓子を用意してくれていることが多い。

そのためいたずらが実行に移されることは少ない。



お菓子はもらえて、とても嬉しい。

でもいたずらはやっちゃいけない。

なるほどな、『Trick or Treat』って言ったもんな。





いや、本当にそうだろうか?

お菓子をもらいながらいたずらもしたい、そんな卑怯極まりない欲望を叶える方法があるのではないか。

ある。





それでは解説のために、以下をご覧いただこう。

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ベン図である。

高校数学の範囲なので、見覚えのある人も多いはずだ。

上記は、『Trick or Treat』(TrickまたはTreat)の関係を図解したものだ。

青い円が『Trick』の集合、
赤い円が『Treat』の集合を示す。

ふたつの円が重なる部分が『Trick and Treat』(TrickかつTreat)であり、図ではオレンジ色の部分だ。



Trick or Treat』は論理的に言えば、図で着色された全ての部分(青、赤、オレンジ)を含む。

つまり、『Trick and Treat』も包含している。

ということは、お菓子をもらった上にいたずらまでしても、論理的には矛盾していないのだ!

やったね。



面白いことに、日本語の『お菓子をくれなきゃいたずらするぞ』でも、お菓子をもらった上でいたずらする選択肢は否定されていない。



これまた高校数学で履修した、「pならばq」のことを思い出してほしい。

命題『お菓子をくれなかったならば、いたずらをする』が真のとき、
対偶『いたずらをしないならば、お菓子をくれた』も真である。


しかし、元の命題の逆『お菓子をくれたならば、いたずらをしない』は、必ずしも真とは限らない。*1



ゆえに、お菓子をくれたのにいたずらをしても、論理的には矛盾しないのだ!

翻って、お菓子をくれなかったのにいたずらを決行しなかった場合、矛盾が生じる。


道徳的にはお菓子もらっといていたずらする子どもの方が絶対に間違ってるが、

論理的にはお菓子をもらえなかったのにいたずらしない子どもの方が間違っていることになる。

なんか直感に反する感じで良い。



ただ論理学的な言葉使いって日常のそれとはけっこうズレてるから、
お菓子もらったのにいたずらしたら普通にめちゃくちゃ叱られると思う。

キッズのみんなは気をつけよう。

いたずらをするにしても、公序良俗の範囲内にしよう。



逆に大人の立場から言えば、『お菓子かついたずら』という事態を防ぐためには子どもに『Trick xor Treat』と宣言させるとよい。

*1:例えば『20歳未満ならばお酒を飲んではいけない』が真のとき、『20歳以上ならお酒を飲んでもよい』は必ずしも真ではない。体質の問題や医師の制限などで、お酒を飲んではいけない成人も存在しうる