蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

白ヤギさんは実質『山月記』の李徴

童謡『やぎさんゆうびん』をご存知だろうか。
黒ヤギが手紙を食べちゃった旨を手紙にしたためるんだけど、相手の白ヤギも手紙を食べちゃって無限ループに陥るやつです。

たぶん、この曲で生まれて初めて無限ループの概念に触れる人も多いのでは。
「このまま2匹は永遠に読まれることのない手紙を送り合い続け、結果郵便局がちょっと儲かるんだろうな……」と思わせる、ちょっと不思議な歌詞。

というわけで今回は、「『やぎさんゆうびん』のやぎさんは、実質『山月記』の李徴である」という話をします。


白ヤギさんは実質李徴

相手の手紙を食べてしまうヤギ

やぎさんゆうびん』の歌詞はこちらから
http://j-lyric.net/artist/a00126c/l001090.html

白ヤギさんのお手紙を、黒ヤギさんが読まずに食べちゃうところから始まるストーリー。
この童謡、聞いたときにどうしても引っ掛かる疑問点がありません?

そうです、何で自分が書いた手紙は喰わへんねんという疑問点です。


まあヤギが紙を食べちゃうのはわかる。
実際ヤギって紙を食べるイメージあるし(そのイメージつけた戦犯はこの曲だと思うけど)。
このヤギが獣として描かれているなら、大事な手紙を食欲衝動のままに食べてしまってもおかしくない。

でもこのヤギたち、手紙を自分で書けるだけの知能を持ち合わせているんですよ。
識字ヤギなんです。

理性もそれなりにある。
その証拠に、紙を食べることなく文章をしたため、封筒に入れ、郵便ポストだか配達人だかに投函できている。


なら、何故相手の手紙は読まずに食べてしまうのか?
相手のことなんてどうでもいいと思ってるのか?

でも、そんな単純な話ではない。本当に相手の手紙がどうでもいいなら、「さっきの手紙のご用事は?」なんて手紙をわざわざ出す必要がない。
いくら器用でも、ヤギのあの蹄で手紙を書くのは、結構大変なはずなのだ。

つまり、白ヤギも黒ヤギも、互いの手紙のことはそれなりに大事に思っているのだ。なのに食べてしまう。食べるのを止められない。

ここから導かれる結論はひとつ。
つまり白ヤギも黒ヤギも、獣性と理性が混じりあった状態にあるということだ。


獣性と理性の狭間で

同じように、獣性と理性のせめぎ合いに苦しめられた、有名なキャラクターがいる。
山月記』の主人公、李徴である。

彼はある夜虎になってしまい、突然その身に押し付けられた運命に恐れおののく。
李徴は虎になった日のことを、以下のように語る。

自分は直ぐに死を想うた。しかし、その時、眼の前を一匹の兎が駈け過ぎるのを見た途端に、自分の中の人間は忽ち姿を消した。再び自分の中の人間が目を覚ました時、自分の口は兎の血に塗れ、あたりには兎の毛が散らばっていた。これが虎としての最初の経験であった。それ以来今までにどんな所行をし続けて来たか、それは到底語るに忍びない。

やぎさんゆうびん』のヤギたちは、ちょうどこの李徴と同様の経験をしているのではないだろうか?

ヤギの中には、人間に似た理性とともに、衝動的なヤギ性が同居している。それが「相手からの手紙」という獲物を目にした瞬間、理性は消え去り、自分の中のヤギが覚醒する。
再び自分の中の人間が目を覚ました時、ヤギの口は文字のインクにまみれ、あたりには紙屑が散らばっていただろう。
きっとヤギたちは、そんな自分の獣性に、絶望を感じたに違いない。

続いて李徴は、こう語っている。

ただ、一日の中に必ず数時間は、人間の心が還って来る。そういう時には、曾ての日と同じく、人語も操れれば、複雑な思考にも堪え得るし、経書の章句を誦んずることも出来る。その人間の心で、虎としての己の残虐な行いのあとを見、己の運命をふりかえる時が、最も情なく、恐しく、憤ろしい。

ヤギにも、人間的な知性が、そして理性的な心が還ってくる時間があるに違いない。
そういう時には、人語も操れれば、複雑な思考も可能で、だからこそ文字を使って手紙を書けるのだろう。
その人間の心で、ヤギとしての己の行いのあとを見、己の運命をふりかえるのだろう。
そして、制御のきかない自分を情けなく、恐ろしく思いながら、そんな自分に強い怒りを感じながら、震える蹄で懸命に文字を連ねるのだろう。

「さっきの てがみの ごようじ なあに」と。


ヤギの性情とは何だったのか

李徴は自らが虎になってしまった理由について、このようにも述べている。

人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。

やぎさんゆうびん』の2匹のヤギもまた、かつては猛獣使いであり。その猛獣にあたる性情が、ヤギだったのだろう。
そう考えれば、何故ヤギたちが自分の書いた手紙は食べないのか、なんとなくわかりそうな気がする。

やはり、李徴の言葉にそのヒントがあると思う。

飢え凍えようとする妻子のことよりも、己の乏しい詩業の方を気にかけているような男だから、こんな獣に身を堕とすのだ。

李徴は旧友・袁參に出会ったとき、自作の漢詩を書き取り、後世に伝えるよう願った。
李徴を失って路頭に迷っているはずの、妻子のことを頼むより先に。


ヤギたちが、相手の手紙を衝動的に食べてしまうのも、自分の書いた手紙は食べないのも、それと似た理由があるんじゃないか。人間の心が戻ったときに手紙を書いているから、だけではないと思う。
彼らは、相手の手紙をそれなりに思ってはいても、やはり、自分の手紙のほうが大事なのだと思う。

自分の書いた手紙を残したい。相手に手紙を読ませたい。自分の気持ちを聞いてほしい。
その気持ちが先に来てしまう。
相手の手紙を読みたい気持ちは、嘘ではないけれど、自分の中のヤギ性には勝てない。

それこそが、ヤギと化した彼らが内に抱えていた、性情だったのかもしれない。彼らはそれを飼い慣らしきれずに、ヤギへと姿を変えてしまったのかもしれない。


ヤギに贈るソリューション

つまり、ヤギをヤギたらしめる性情とは、承認欲求だったのかも。
自分に注目してほしい、自分の作ったものを見てほしい、書いたものを読んでほしい。他の誰かが作ったものが、注目と称賛を集めているのがくやしい。食べてしまいたい。食べて、もう誰もそれを見られなくしてしまいたい。

そんな衝動的な承認欲求は、程度の差こそあれど、創作する人なら誰もが持ちうる気持ちだと思う。
というか欲求を持っていることは、何も悪いことではないのだ。
人間は誰でも猛獣使いだと李徴が言ったように、誰もが猛獣を心のうちに飼っている。それは虎かもしれないし、ヤギかもしれないし、ヒヨコかもしれない。そんな自分の性情を許容して、猛獣を飼い慣らせたら、それで構わないのだと思う。

もし猛獣が馬だったら、そいつの背に乗って、目的地まで走っていけるかもしれないし。
たまには自分の心の子猫と目一杯じゃれてみたり、ナマケモノと同じ速度で生活してみるのもいいかもしれない。



とりあえずそこのヤギ2匹は、LINEを導入しろ。
承認欲求はTwitterはてなブログで満たせ。

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いつも心に藤森慎吾を

オリエンタルラジオの藤森慎吾さんが素晴らしい。
そのことを皆さんにも知ってほしい。

目次

藤森さんになりたい

いきなり気持ち悪くてごめんて感じなんですけど、筆者の将来の目標のひとつは「藤森慎吾さんみたいな人になること」です。
ほぼそれは言い換えれば「才能あふれる天使になって豊富な人脈と財産を形成したい」みたいな願望なので完全に藤森さんのようになるのは到底不可能だとは思うのだけど、ちょっとでも彼のような人間になれるよう頑張りたい。ひそかに心の目標にしている。
なぜかというと理由はめちゃめちゃたくさんあるのだけど、そのうちからいくつか皆さんにもお伝えしたい。

なぜなら彼は才能が凄い

オリエンタルラジオ自体が才能と知略の塊みたいなコンビではあるんですけど、中田敦彦の圧が凄すぎて、やはり中田さんの才能のほうが注目されているのではないだろうか。
中田さんは時代のトレンドを読む能力、プロデュース能力、プレゼンテーション能力など、華やかな才能に秀でている。そして爪を隠さないタイプの鷹……というか虎*1であるので、常に新しい目標に取り組んでいて、才能全開のギンギンの自分をさらけ出している。

ゆえに中田さんの才能が印象に残りやすく、その隣で明るくチャラくバランスを取っている藤森さんはついついナメられやすい。まあそれは雑ナレーターやラジオリスナーが雑にいじっても、ちゃんと律儀に突っ込んで笑いに変えてくれる彼の丁寧な対応ゆえなんですけどね。それも藤森さんの素敵なところなんですけどね。
だけど、藤森さんの才能だって中田さんに負けず劣らず凄いんだから! ということで、藤森さんの素晴らしさを自慢させてください
(なお筆者は親族でもなんでもないただのファンで、本来自慢する立場にないがご容赦ください)


藤森さんの溢れる才能ポイント

  • 声がめちゃくちゃ良い
  • 語感の良さに対する感受性が非常に高い
  • 歌がとんでもなく上手い
  • 滑舌が良い

ファン以外の方にも比較的よく知られている才能が、上の4つではないだろうか。
何しろ彼はRADIOFISHとして紅白歌合戦にも出たほどだし、チャラ男の合いの手だって精密なリズム感と印象に残る声があってこそできた芸だ。

それに加えて知っていただきたいのが、以下の2つ。

  • 流行に対するアンテナ
  • 勝負勘の強さ

一般にオリエンタルラジオは3回ブレイクしたと言われているが、そのどれもに、藤森さんの上記の才能が絡んでいる。

第1次ブレイクは、『武勇伝』。オリラジはNSC(養成学校)在学中に、このネタでM-1準決勝にまで進出する快挙を達成。卒業後すぐに大ブレイクを果たし、数々のお笑い番組に引っ張りだこに。また、芸歴1年で冠ラジオ番組を持ち、その後テレビでもいくつも冠番組を持つという快挙を達成。(なんと帯番組まで持っていた!)

この『武勇伝』の元になった、『中田伝説』というネタがある。中田さんはNSCに入るまでにネタを100本作った逸話があり、そのうちの1本がこの『中田伝説』である。
ある時NSCで彼らが漫才を披露したとき、講師は「掛け合いになっていない」というダメ出しを出した。真面目な中田さんは、100本の中でなんとか講師のダメ出しに応えられるものを探して悩み、慎吾さんに相談した。
すると、慎吾さんは「これがいいんじゃない?」と、『中田伝説』のネタを指差した。中田さんの100本の中でも、随一大喜利の羅列に近く、掛け合いを無視したそのネタを。つまり、講師のダメ出しに、あえて逆行しようとしたのだ。
ふたりは講師の前でそのネタを披露した。怒られるかと思いきや、講師には「ええやん」と認められたという。それからふたりはネタを磨き、『武勇伝』の原型ができていった。
このエピソードは中田敦彦『芸人前夜』の中で紹介されている。

芸人前夜 (ヨシモトブックス)

芸人前夜 (ヨシモトブックス)

  • 作者:中田 敦彦
  • 発売日: 2013/11/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

そして、第2次ブレイクは『チャラ男(合いの手)』。あやまんJAPANとのコラボから始まったブームである。藤森さんはこのキャラで再ブレイクを果たし、AKB48から郷ひろみさんにまでチャラッチャラな合いの手を入れまくった。テンションを常にMAXあげぽよにしておかなくてはいけなかったので、休みの日は一日中ソファに座って無になっていたこともあったらしい(トークライブ情報)。
合いの手は、藤森さんが芸人の先輩たちと遊び回る中で磨かれていった特技らしい。そんなときTVであやまんJAPANを見かけた藤森さんが「この人たちと何かやりたい」と思いコラボが実現し、それをきっかけにチャラ男キャラとして大ブレイク。「復活を遂げた」と言われた。

忘れがちなのが第2.5次ブレイク『ラッスンゴレライの完コピ』。後輩である8.6秒バズーカーのネタを、異様な動きのキレの良さとキャッチーなボイスで再現するという、たぶん他に類のないネタである。オリラジはこれでまたまたプチブレイクし、色々な現場に呼ばれていた。おそらくこういうブレイクの仕方ができるのは、あとにも先にもオリラジだけだと思う。ちなみに8.6秒バズーカーの田中シングルにも、「兄さん僕らよりテレビ出てません?」と言われていたのを見たことがある。
実はこれも、ラッスンゴレライのネタを見た藤森さんが「やりたい。いつか振られたときにできるように練習しておこう」と言って、ふたりで練習していたからこそのハイクオリティー。だからこそのブレイクだったのだ。

そしてお待ちかね、最後は絶対に外せない、第3次ブレイク『PERFECT HUMAN』。これで6人組グループRADIOFISHは日本有線大賞の企画賞を受賞し、紅白歌合戦にも芸人枠ではなくアーティストとして出場することができた。快挙である。
ここまで来るには、相当な道のりがあった。

きっかけは、中田さんが「歌って踊るグループを作りたい」と考えたところからだった。
そのときメンバー集めを任されたのが、中田さんの弟、FISHBOY。「ダンスの技術があるイケメンを4人集めてほしい」という実兄からの無茶苦茶な依頼を見事にやり遂げ、show-hey、RIHITO、SHiNの3名をスカウトしてみせた。このFISHBOY氏、本人がイケメンな上に尋常でない人脈を持っていて、「FISHはいいやつ」「世界でもトップクラスにいいやつ」「ダンスの変態」と評される魅力的な人物である。機会があったら語りたい。

そして、晴れてRADIOFISH結成。最初はアイドル路線の正統派ラブソングを歌っていたものの、ほとんど話題にならなかった。そんななか、自身を見つめ直した中田さんは気付く。「俺、ラブソングを書きたいんじゃない。崇め、称えられたい。」と。
中田さんはすぐに藤森さんに「俺を褒め称えるリリックを書いてくれ。俺はあんまり歌わなくていい感じで、でも目立つところで『I'm a perfect human.』って言いたい」と注文(自分の欲望に正直)。藤森さんは見事にあのラップのリリックを書き上げた。もちろん、ラップの作詞経験はその当時の藤森さんにはほぼなかったのに、である。
このエピソードはアルバム『PERFECT HUMAN』の特典DVDにも収録されている。

PERFECT HUMAN(TYPE-A)(DVD付)

PERFECT HUMAN(TYPE-A)(DVD付)

  • アーティスト:RADIO FISH
  • 発売日: 2016/05/25
  • メディア: CD

オリラジの司令塔は中田さんだから、ついつい藤森さんは「指示されて動いてる人」と見られがちだ。しかし、オリラジのブレイクは、中田さんの戦略的なトレンド分析力と、藤森さんの直感的にトレンドを捉えるアンテナ、両方があってこそのものなのだ。

なぜなら彼は何でもできる

さらに、ここまで読んでくれた方は、ある疑惑を抱いたのではないだろうか。
それが、オリラジ藤森慎吾、何でもできるんじゃないか疑惑である。
なんせ、彼の才能は多岐に渡る。

  • 『武勇伝』のフリを完璧に踊れる

真似したことがあればわかるが、あのフリを綺麗にやるのは意外と難しい。真似するとだいたいの人が「ただ腕を振り回して左右に揺れてる人」になる。

  • ダンスも踊れる

チームしゃちほことのコラボ『BURNING FESTIVAL』では藤森さんも全力で踊りながら歌っている。明らかにRADIOFISH初期の頃より踊りが上達している。

BURNING FESTIVAL

BURNING FESTIVAL

  • チームしゃちほこ×RADIO FISH
  • J-Pop
  • ¥255

  • 歌がうまい

あのハイトーンボイスで安定した歌声を出せるのは凄まじい。May.Jさんとのコラボ曲『NEW GOD』、なんとライブではあの歌姫May.Jさんのパートまで歌ってみせるのだ! 男性がである。とんでもねえ。

  • ラップを書ける

中田崇め系のラップは基本的に慎吾さんが書いているし、なんと彼は大流行中のヒプノシスマイクにも作詞家として参加している。『シャンパンゴールド』という最高にアゲアゲな曲なのでおすすめ。

  • 高速ラップを刻める

中田崇め系の中でも最も高速なのが『NKT34』。なんとこれ、最初の段落を噛まずに最後まで歌いきる『NKTチャレンジ』なるゲームが発生するほど難しい。筆者は一度も成功したことがない。こんなもん歌えるの怪物じゃんと思う。

  • 合いの手ができる

チャラ男全盛期の代名詞だが、今でもその能力は健在。郷ひろみさんの新曲『恋はシュミシュミ』では、まさかの郷さんサイドから直々にオファーを受け、コラボが実現している。

  • 声優もできる

藤森慎吾さん、なんと声優もやっている。よくある芸人のゲスト枠としての参加だけではない。『モンスターホテル』シリーズでは主人公の娘と恋に落ちる重要な役を任されている。
しかも、ピクサーの『カーズ/クロスロード』では、マックイーンのライバルであるジャクソン・ストーム役を務めている。こいつがもう、生意気でいけすかないんだけど天才で努力家で、めちゃめちゃ愛しいキャラなのだ。普段の藤森さんとギャップがありつつ、来歴としては重なるところもあって深い。不遇の時期を才能と努力で乗り越えた藤森さんが演じるからこそ、ストームが「ただ負けて終わるライバル」ではなく、「この挫折をバネに更なる飛躍を遂げる、前途有望な若者」として描かれていたと思う。

ラソン大会に参加し、初回でサブフォー(4時間を切る)、それが藤森慎吾という男。とんでもねえ。

  • 料理もできる

美味しい料理も作れる、それができた藤森慎吾という男。以前は相方にも振る舞ったりしていたらしい。得意料理はパスタ(今は変わってるかもしれない)。

  • バーベキュー

バーベキュー検定を取得して、ぶっ飛んじゃうくらい美味しいシイタケとピーマンを焼けるようになった、それが藤森慎吾という男。
しかもそれをファンが味わわせてもらえるのがRADIOFISH界隈。とんでもねえ。

  • 堅実な司会もそつなくこなす

多才でありつつ、芸人としてのトーク力や場を回す采配力もしっかり持っているのが藤森慎吾である。
中田さんいわく「進行をめちゃくちゃちゃんと守ろうとする」らしい。スタッフさんへの気遣いも完璧。
この司会力と、RADIOFISHとしての活動がフュージョンした結果、フェスやライブのMCとしてこれ以上ない逸材になっている。

  • ファンを虜にする

ファン想いでサービス精神旺盛なのが彼の魅力。握手やハグ会ではファンを褒めたり、ファンの質問に気さくに答えたり、お願いすると甘い言葉もささやいてくれたりする。優しい……!

だが、そんな彼にも不得意なことはあるので安心してほしい。絵心が、なんというか、非常に味のある感じである。そういうところもかわいい。


なぜなら彼は人柄が最高

何より藤森さんは人柄が最高である。
彼の鮮やかで多様な才能を支えているのは、間違いなく彼のたゆまぬ努力である。むしろ頑張りすぎて叱られることさえあるほど(トークライブ情報)。

ファンにも気さくで優しく、柔らかい雰囲気を持つ人だ。人見知りでアワアワしてるファンにも優しく応対してくれる。

芸人さんなのに、キャーキャー言われても嫌な顔せず、むしろノリノリで対応してくれさえする。男性芸人・ラッパーの中には、露骨に女性をばんばん性的消費するわりに、女性が男性を観賞することには極度に否定的な人もいる。だがオリラジファンでいるとそういう空気に晒されずにすむ。
男性が女性アイドルに夢中になるのも、女性が男性タレントに夢中になるのも、もちろん同性タレントに夢中になるのも、同じように尊重してくれるのだ。

しかも彼は、女芸人の容姿を安易にけなしたりしない。人をけなさなくても、肯定しながら笑いをとることができる人だ。
ツイッターでも、ヒルナンデスでの対応が話題になっていた。

女性の趣味も頭ごなしに否定したりしない。関東圏にお住まいなら、『王様のブランチ』のトレンド部を一度見てみてほしい。インスタ映えもトレンドスポットも、楽しみながらきちんと褒めつつコメントし、笑いは共演者との絡みを通してとる。きっと彼なら、セーラームーンカフェも受け入れて、適度にツッコミを入れつつ楽しいロケに仕上げてくれたんじゃないかなあと思う。


しかも、あの苛烈な人、燃え盛る衝動と突き進む鋼の意志を持つ中田敦彦と、15年もいっしょにやってきたのだ。中田さんは凄まじい才能と努力の人だけど、いかんせんパワーとスピード感がありすぎる。たぶんファンでさえ常に伴走しようとしたらア゛ーってなるレベルの、常時フルパワーのえげつない疾走感。そんな中田さんとずっと共に走り続け、中田さんからの依頼を華麗にやり遂げてみせる藤森さんは、ほんとうに天才だと思う。
それがどのくらいすごいことかと言うと、中田さんの実弟FISHBOY氏が「藤森さんまじですごいですね……」と言うレベルですごい。いや逆にそうなってくるとFISHBOY氏もすごいし、実の弟にそこまで言われる中田さんもすごい。やばい。



なお、トークライブのアーカイブは、中田さんが運営するNKTサロンのシアターでも見られるそうです。月額2000円で見放題制。
https://www.nakataatsuhiko.com/salon-theatre

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*1:RADIOFISHクラスタの中では、虎を表す絵文字🐯が中田さんのアイコンとなっている。ちなみに虎は猫とは違い、爪をしまうことができないらしく、そういうところも彼にぴったりかもしれない

かみさまは中学二年生

中二病」がテーマのショートショートです
実在の人物団体作品等とは一切関係ありません。




かみさまは中学二年生

少年は同級生と、横並びに座っている。
同級生は前を向いたまま、少年に話しかける。

「お前さあ、なんであんなこと言うたん? お母さんめっちゃ驚いてたで」
「うん……」

「なんかあったん?」
尋ねられた少年は首を横に振る。

「……なあ、僕が変なこと言っても馬鹿にせん? みんなに言わん?」
「馬鹿にせんかはわからんけど、他人には言わんけど」

少年はその答えに少しだけ笑う。
一瞬、ためらうような表情を見せるが、少年は口を開く。

「僕さあ、神様って中学二年生やと思うねん」
同級生は驚いて少年のほうに振り向く。
「は? 何の話?」

「あ、ほんまにどっかの中二が神様やと思ってはないねんけど、神様って中二病やと思うねん」
「何が?」
同級生は話の要領が飲み込めず、とんちんかんな疑問詞を返す。

「『神様は自分の姿に似せて人間をお作りになった』とかいうのあるやん」
「それは、神話とか宗教とかの話?」
「うん。それで思ってんけどさ、人類って繁栄してるやん」
「順序立てて喋ってくれん?」

「うん。えっと」
少年はわたわたとジェスチャーらしき動作をしながら、口をぱくぱくしている。話したいことをまとめられない様子。
「あーもういいよ。好きに喋って」
同級生は少年をなだめる。

「うん。人類って繁栄してて、他の種を力で制圧したり、絶滅させたり、世界中に広まったりしてるやん」
「そうやな」
「で、世界を作ってるのがほんまに神様やとしたらやで。神様が自分に似せて人類作って、自分に似てるキャラを繁栄させたり最強にしてるんやったらさ、神様ってめっちゃ中二病じゃない?」
「それはあれ? メアリー・スーとかいうやつ? やたら最強で天才のスーパーマンキャラが主人公になって活躍するみたいな」
「うん。なろう小説で、異世界転生チート主人公が俺TUEE無双するみたいな」
「は? お前変な言葉知ってるな。もっかいゆっくり説明つきで言って」

少年は同級生の要求を無視する。
「だから神様がそういう中二病の作者やとしたら、神様が成長したとき僕ら人間って黒歴史になるやん」
「そもそもお前の中では神様って成長すんの?」
「だって小学生のときは恐竜に夢中になってたやん」
ジュラ紀のとき小学生やったん?」

「恐竜に飽きたあと哺乳類に力入れて、自分に似てるキャラを無双させはじめたんやと思うねん。でも今後神様が高校一年生になったらやばくない? 僕ら」
「まあ、『あー!!! 恥ずかしい恥ずかしい!!! 黒歴史すぎる!!!』って言って全員消されるかもしれん」

「もちろんそのときは僕もう死んでると思うから関係ないんやけど、いつか人類滅ぶかなあと思ったらめっちゃ虚しくなってきて。とにかく誰かに聞いてほしかってん」
「お前、だからって『おかん!!! 人類滅ぶ!!!』って叫んだらお母さんびっくりするやろ。お母さん、お前がネットで変な陰謀論にはまってると思ってんぞ」
「それはあとで謝っとく……」

「それに、まだ滅ぶかわからんで」
同級生は少年を励ますように、背中を叩く。
黒歴史でも、自分に似てるキャラには愛着あるかもしれんやろ? 繁栄しまくったり他の種を滅ぼしまくったりするのやめて、もっとまともで現実的なキャラ設定になって存続するかもしれん」

「それもそうやね……」
「そやろ? だから人類が滅ぶかは五分五分ちゃう?」
「しかも今時、大人になっても60代なっても俺TUEE小説書いてる人いてるもんな!」
「いやだから何? それ。そこの事情は俺よくわからんけど」

「だから意外と人類もさ、これからもずっと無双していくかもしれんよね。ウナギとマグロ食べ尽くす! とか」
「それ無双なんか?」
「だって滅ぼそうと思って武力で頑張って滅ぼすんじゃなくて、『人類が異世界で他種族を食い尽くす~ウナギとマグロ、俺がちょっと本気出して狩りしたら滅んじゃいました~』やで? めっちゃ俺TUEE無双やん。中二病すぎやわ」
「いや知らんけど。そういうの知ってるお前が言うんやったらそうかもしれんけど」
同級生は少し呆れた顔。

少年は立ち上がる。
「わけわからん話聞いてくれてありがとう。すごいすっきりした」
「ほんまにわけわからんかったわ。別にいいけど」

「あ、お礼にうちでペヤング食べへん?」
「お前の家行くん嫌やわ。お前まだお母さんに陰謀論者やと思われてんねんで」
「そうやった」
「今度、食堂の唐揚げおごって」

中学二年生のふたりは食べ盛りだ。人類の滅亡のことも、食堂の唐揚げが売り切れてしまうことも、同じくらい心配している。

ふたりが大人になったとき、このことを思い出して、恥ずかしく思うのだろうか。
それともいい思い出だと懐かしむのだろうか。





おわりです

ヒプノシスマイク各キャラの誕生日について

各キャラの誕生日についてです。

イケブクロ

長男 7/26
次男 2/6
三男 12/16


一応、一郎の誕生日はキューバリベリア独立記念日だったりする。共産主義(社会主義)が唯一成功している国」と言われるキューバと、アメリカの解放奴隷が建国した国リベリア。何か関係あるのだろうか?
革命や独立国家制定の概念は、一郎のキャラを考えるとよく似合いそう。しかも奇しくも彼のMCネームであるビッグブラザーは、あの有名な共産主義ディストピア国家の象徴と同じ名前だ*1
とはいえキューバ独裁国家と言われることはあれど決してディストピアではなく、むしろ経済的にはそれなりに安定しているらしい。ディストピアを連想してしまうのは、単にカニの考えすぎかもしれない。


二郎の誕生日・2月6日の記念日としては「世界女性器切除根絶の日」があった。アフリカなどで行われている危険な風習の根絶をはかるための日で、女性解放運動の一貫である。
風習の成立理由はいろいろあるものの、「女が自分で性欲を得ないため」みたいな理由で、野草植物のトゲで麻酔なしで切除が行われたりするらしい。自分の体を切られることを拒否できないだけでなく、清潔な手術室も消毒済みのメスも質のいい麻酔も望めない。だから感染症で死ぬ人もいる。
「昔からの伝統的な風習なんだからいいじゃん!」とかそういうレベルではないくらいヤバい。

ただ、ヒプマイの世界観で男性が肉体を強制的に切断されたり、性的に強力に抑圧される風習はなさそうなので、これは偶然だと思われる。*2
たぶんジロウだから2=ジ、6=ロウ、という語呂合わせである可能性のほうが高そう。


三郎の誕生日・12月16日の記念日には、「電話創業の日」や「和解の日(南アフリカ)」がある。
和解の日は1994年に南アフリカアパルトヘイトが廃止されたのを機に制定された日で、白人と有色人種の和解の日という意味がある。
アパルトヘイト南アフリカで行われていた、有色人種に対する差別政策。(ちなみに日本人は黄色人種だけど「名誉白人」だったらしいです。「被差別属性なのに差別する側に入れてもらえる」のが「名誉」と表現されるのキツすぎると思う。)
ヒプマイの世界にも特権階級女性を隔離する政策があるみたいなので、これは関係あるかもしれない。


イケブクロについては、各キャラの記念日よりも、3人の共通性が面白い。全員2と6を共通の数字として持っている。
もしかすると、兄のコピーかつバックアップの二郎=兄と共通の要素(2と6)があり、しかし兄にはあるのに欠けている要素(7)もある。
兄を違った形でサポートしようとする三郎=兄と共通の要素(2と6)があり、兄にはない要素(1)もある。
と考えることもできるかも。


ヨコハマ

左馬刻 11/11
銃兎 5/30
理鶯 6/21


左馬刻、ぱっと見て「1が並んでいる」のがわかる。1番に固執する男だったり、4人家族がバラバラになってたりを示唆しているのかもしれない。
記念日としては「復員軍人の日(アメリカ)」や「チンアナゴの日」がある。1が並ぶ日という特異性ゆえか、この日は記念日が多い。チンアナゴ……

やーいやーい、お前の誕生日チンアナゴの日~!
(11月11日生まれの皆さんすみません)

男女共同参画週間」にあたるというのも皮肉な話。女性優位という設定の世界で、女遊びをしたり女性蔑視を見せたりするのが彼だから、二重にねじれている。また、麻薬・覚せい剤乱用防止運動の期間でもあるようだ。


銃兎の誕生日、5月30日の記念日としては「ごみゼロの日」がある。この日はあまり銃兎と関係のありそうな記念日がなかった。ただし、「けん銃取締り特別強化月間」「全国暴力団総合対策特別強化月間」や「不正大麻・けし撲滅運動期間」にあてはまる日である。だからこそ彼の誕生日を5月下旬に定めたのかもしれない。


理鶯の誕生日6月21日といえば、夏至になることが多い日である。
「がん支え合いの日」で、薬物乱用防止月間でもある。海軍に関する記念日は見つけられなかったが、出来事や命日を調査すれば何か見つかるかもしれない。


3人の誕生日の共通性として、薬物乱用防止に絡んでいるという点が挙げられる。
これは意図的なものかもしれないが、単に年中いつでも何かしらの薬物の乱用防止を強化しているだけという可能性もあります。あしからず。


シンジュク

寂雷 1/9
一二三 6/22
独歩 5/15


寂雷先生の誕生日は「風邪の日」でもあるらしい。医者らしいといえば医者らしいのか。あとは「とんちの日」でもある。一休=1、9という語呂合わせによるもの。松の内空けすぐだからなのか、この日はそれほど記念日も強化月間も多くなかった。
ちなみにこの日は哲学者ボーヴォワールの誕生日でもある。ボーヴォワールのパートナーであったサルトルの誕生日は理鶯の誕生日と同じ6月21日。ふたりの間には何か縁があるだろうか。


一二三の誕生日は6月22日。この日は「かにの日」らしい。
そしてこれは、カニがオリラジファンであるために気づいたことなのだが、彼の誕生日は藤森慎吾の誕生日(3月17日)と中田敦彦の誕生日(9月27日)のちょうど真ん中なのである。*3
藤森さんは一二三のキャラソンシャンパンゴールド』の作詞者なので、あえてこの日を誕生日に定めたのだろうか。もしかすると、他のキャラの誕生日も、作詞作曲者に由来しているかもしれない。


独歩の誕生日5月15日は、「国際家族デー」などの記念日がある。
また、ローマ神話の商業の神メルクリウスに由来する「商人の祝日」でもある。社畜の誕生日が商人の祝日……皮肉でちょっと同情する。
(余談ですがメルクリウスってメルカリに似てるなと思ったら、メルカリはラテン語で「商いする」という意味らしい。語源が同じなのだろう。)


3人の誕生日のあいだには、目立つ共通点はなかった。多様性があるのがシンジュクの特徴なのかも。


シブヤ

乱数 2/14
幻太郎 4/1
帝統 7/7


この3人はすごくわかりやすい。
まず乱数はバレンタインデー。恋人たちの日である。
ちなみに乱数はそのへんのお姉さんに飴ちゃんを配るというオオサカン・オバチャナイズドされた行動傾向があるが、これは日本独自の記念日・ホワイトデーの風習ともよく似ている。ホワイトデーには、バレンタインデーにチョコレートをもらったお返しで、男性が女性に対してクッキーやキャンディを渡すという風習があるらしい。


幻太郎はエイプリルフール。嘘つきにふさわしい日である。
また、年度初めの日であることにも注目したい。彼が拾われた子というのが正しいなら、彼のほんとうの誕生日がわからないゆえに年度初めを誕生日と決めたのかもしれない。
そして4月1日に生まれた子は、その学年で最も月齢が幼いことになる(4月2日以降に生まれた子はひとつ下の学年になる)。幼稚園や保育園では月齢による発達段階の差が大きいので、体の大きさや行動の早さにも関係してくるらしい。しかも幻太郎のほんとうの誕生日は不明なので、もしかすると本来はひとつ下の学年になるはずの子だったかもしれない。さすがに小学高学年あたりではもう個人差のほうが大きいと思うが、月齢の若さが彼の学校生活に影響を与えた可能性も否定できない。

私は個人的に「幻太郎は嘘をつきすぎて本当の自分が誰なのかもはやわからなくなっている」説を推しているので、自分の誕生日がわからないゆえに、わかりやすくエイプリルフールを誕生日だと言っているんじゃないかと邪推している。


帝統の誕生日は7月7日、七夕である。
おそらく彼の場合はドラえもん方式*4でいろいろな数字が決まっていると思う。
誕生日から体重から、全て「7」が絡んでいる。さすがに身長が777cmというわけにはいかなかったみたいだが……。
これはやはり、スロットの大当たりであるスリーセブンからきているのだろう。


3人の誕生日に共通点はないが、みんなわかりやすい記念日があるという意味では似ているかもしれない。


まとめ

というわけで各キャラの誕生日を見てきた。ここで書いた推測がどのくらい当たっているのかはわからない。でも、一二三の誕生日がオリラジふたりの誕生日のちょうど真ん中とわかったときはかなりテンションが上がり、楽しかった。

こうしてみると、誕生日の配置がある程度偏っているのがわかる。特に8~10月生まれのキャラはひとりもいない。これはおそらく、周年記念イベントを9月前後に行うからではないだろうか。
周年記念で販促を活発に行うから、キャラの誕生日のほうに購買層が流れるのを避けたかったのだと考えられる。

その日に起きた歴史上の出来事や誕生日、命日は今回扱わなかったので、その中でキャラと関係が深そうなのをご存知ならコメントをいただきたい。


また、ここで扱った記念日は、以下のサイトを参考にしました。ありがとうございました。

関連記事

*1:ジョージ・オーウェル1984年』をご参照ください

*2:全く描かれていないだけでそういう風習がある可能性もないとはいえないが

*3:皆さん私の推しの誕生日だけでも覚えて帰ってください

*4:身長129.3cm、体重129.3kg、胸囲129.3cmで全て同じ数字

カップルで行くディズニーはプリウスといっしょ説

カップルでディズニー行くと別れる問題」ってありますよね。

上記のツイートは大変話題になっていたやつで、8月31日時点で5.1万リツイートされています。


ここでは「カップルでディズニーに行ったけど俺は別れなかった」とか「そもそもディズニーで別れるやつはいずれ別れる」とか「『女が悪い』ってリプを脈絡もなく突然投げつけるそこのお前そういうところだぞ」とかそういう地雷原には触れません。


その代わり、カップルで行くディズニーはプリウスに似ているというお話をします。


そもそもなぜ付き合いたてのカップルはディズニーへ行ってしまうのか

カップルがディズニーに行く理由、いろいろあるでしょうが、定番だからってのが大きいでしょう。
みんな行ってるから、デートといえばの定番スポットだから……という理由で、ディズニーを熟知していないのにディズニーを選んでしまう。
それが、デートでの気まずさや衝突を生んでしまう要因のひとつではないか。


また、ディズニーデートって、実は高難度なのに、一見難易度が低そうに見えるのがトラップだと思う。

たぶんディズニーランドやディズニーシーにあんまり行ったことがないと、この勘違いを起こしやすい。
「買い物デートだと、たくさん話さなくちゃいけなくて間がもたない。それに相手の買い物に付き添うのは手持ち無沙汰で飽きる。それに比べてディズニーはアトラクションに乗ってパレード見とけば盛り上がるし、カップルらしくて雰囲気いいし最適じゃん! きっと喜ぶだろうな~」
みたいに思ってしまう危険性がある。


実は高難易度クエス

しかし、ディズニー好きなら知っているだろうが、ディズニーは楽しいかわりに難易度も高い。
まず、ディズニーでの1日はほぼ待ち時間で構成されている。アトラクションに行列をなす時間、パレードの場所取りをする時間、食事のために並ぶ時間。
その長い時間を、1対1で、気まずくならないように埋める必要があるのだ。お互い無言で別のことしててもオッケーな信頼関係があるならまだしも、付き合いたてとなると、会話で間をつなぐスキルとサービス精神と相性が必要となる。
(もちろんガチ勢ならファストパスを最大限活用して、予定をがっちり組んで目的を絞ったうえで臨むだろう。けどカップルのふたりがたまたま両方ディズニーガチ勢という確率はそんなに高くないはず。)

しかも高度な連携が必要だ。列に並んでる間に次に行くアトラクションを相談するとか、1人がレジに並んで注文してるあいだにもう1人は席を確保するとか、自分はマップを見て相手にはイベント情報を見てもらいながら段取りを組むとか。

これは例えて言えば、いきなり2人きりでIKEAのでかい棚をDIYするようなものだ。考えてみてほしい。絶対ごちゃごちゃしてお互いが邪魔しあったりしちゃうし、手際良い側はのろいほうに腹を立てるし、最後のほうは疲れてしゃべる気力もなくなる。


だからこそ、カップルでディズニーに行くと別れるというジンクスができたのではないか。*1


難易度が低そうで高いという罠

この、安易で楽そうに見えるのに実は難しい、というポイントが曲者。
だからこそ、新兵が過酷な最前線にぶちこまれるような事態が起きてしまう。


実はたぶんこれと同様の事態が起きた結果、不名誉な噂をたてられている車が存在する。
プリウスである。

プリウス、「事故ってる車はだいたいプリウス」だの「対向車がプリウスなら身構えろ」だの、危険な車という悪評を着せられている。

私はこれも、プリウス難易度が低そうで高い性質のためではないかと考える。


プリウスハイブリッドカーなので圧倒的に燃費が良い。しかも電気で発進し、ブレーキや下り坂で充電できる性質上、こまめに信号で止まる都会走行向きの車である。
……という特長が積極的にアピールされるため、プリウスのイメージは「環境にやさしい、街中でちょこちょこ運転する人向きのシティカー」だ。
しかも流線型でスタイリッシュ、内装も都会派でここちよい。CMも都会的な感じである。


実はでかい車、プリウス

と、イメージだけでとらえると、燃費を気にする人や街中でちょっと車に乗る人にもおすすめの、万人向けの車という感じに見える。
なんだか、「運転をそんなにしない私にも向いてそうな車」に思えてきませんか。

しかしプリウス、実のところ3ナンバーである。
すなわち、車体がでかいのである。
エンジンもそこそこでかいのである。
ある程度、馬力のある車・でかい車を乗りこなせる人でないと身に余るのだ。

あと、都会的でスタイリッシュゆえに、ギアがちょっと個性的らしい。慣れてないと操作を間違えるやつである。

それが、他の3ナンバーをすすめられたならきっと「いやいやこんな大きな車は自分では持て余しますよ」
と自分の力量をわきまえて答えるはずの利用者層までが、ハイブリッドシティカーのイメージに引きずられて、
プリウスなら自分にも合ってるかも!」と思ってしまうのではないか。

IKEADIYだったら自分たちには無理だとわかるのに、ディズニーならイケると思ってしまうのと同じ原理である。


ゆえに、本来はでかい車を操る自信のない人までがプリウスを選び、
結果的に内輪差を見極めきれずに脱輪したり、車幅がわかっていなくて擦ったり、バックとエンジンブレーキのギアを入れ間違えたりするのではないか。
「私は猫。この穴の幅ならくぐれる」と思っている大型犬みたいなものである。だいたい鼻先を壁に突っ込んで大惨事になってしまう。

悪いことは言わない。
運転それほど得意じゃないけどハイブリッドなシティカーを買いたいなら、せめてプリウスの妹、アクアにしておきましょう。
アクアなら3ナンバーじゃないから。どちらかといえば小さめな普通自動車だから。


カップルが別れプリウスが事故るもうひとつの理由

ディズニーに行くとカップルが別れ、事故ってる車が大体プリウスなのには、もうひとつ理由が考えられる。

それは、単純に数が多いからだ。

東京の人口は1200万人だから、およそ10人に1人は東京に住んでいることになる。関東の人口を合わせたらもっとだろう。そのうちカップルでディズニーに行った人だけを絞り込んでも、相当数いるだろう。
しかもディズニーは言わずと知れた定番人気スポットだから、関東以外からもたくさんのカップルが訪れると考えられる。
それだけカップルが来れば、そりゃあ別れるカップルだってたくさんいるはず。そして、別れたカップルだけが目立つのではないだろうか。

プリウスもそう。
販売台数日本1になったこともあるし、1年で10万台とか20万台とか売れるような大人気の車なのだ。
世の中の車に占めるプリウスの割合が大きいのだから、事故車に占めるプリウスの割合だって大きいのが当たり前のはずだ。


というわけで、実はディズニーへ行くカップルも、プリウスも、本当は全然悪くなくて、ただ数が多いから目につくだけかもしれない。
そのこともちゃんと提示しておこうと思います。


あとこれは個人的な根拠のない推測だけど、ああいう噂がはやるのは、ネットの「ぐぬぬリア充め」的な雰囲気も関係ある気がします。
ディズニーに来てるカップルはラブラブで幸せだし、プリウスを買えるような人はだいたいそこそこお金を持っているから……。

*1:しかもミッキーやドナルドはそこらのホモサピエンスの何倍もかっこよくてかわいいし、デイジー様の大人のお姉さま感はすごい

お前はマイナビに完全に包囲されている

マイナビに人生を支配されるショートショートです



鈴木健太は関東圏の私大に在学する、文系の大学3年生。部活やサークルには入らず、趣味は音楽を聴くこと、バイトは個別指導の塾講。そんな、目立った特徴のない、平均的な青年である。


「なんで今の仕事に就いたか? また唐突な質問だな」
4人掛けのテーブルを挟んで、健太の父が言う。その片手には500ml缶の発泡酒。金曜の夜ということもあり、父はご機嫌に晩酌をたしなんでいた。

「うん。マイナビ学生の窓口*1のキャリアセミナーで、自分の仕事観を考えるといいって言っててさ。
やっぱそのためには、身近な人の仕事観を聞いてみるのがヒントになると思って……」
健太は言っていて少し恥ずかしくなった。これではまるで、意識高い系みたいじゃないか。

「そうか。健太も真面目に考えてるんだなあ。父さんが学生のころはそんなのなかったよ」
「うーん、でも俺はちゃんとやってないほうだと思うよ。周りの奴にはマイナビ*2インターンに参加しまくって、もう外資の内定もらってる奴もいるし。俺は適当に何社か応募したけど、選考落ちちゃったからな……」

「そういうもんか。若者は大変だなあ」
父は健太の恥じらいなど気にとめず、鷹揚に呟く。
我が子の苦労や努力を素直に認め、感心してくれる父を、健太はひそかに尊敬していた。そんなこと、それこそ恥ずかしくて口には出せないが。

「仕事観、なあ。そうなるとどうしても、母さんとのなれそめも話さなきゃなあ」
口先では面倒そうに言う父の表情は、にやにやと嬉しそう。実はこの男、息子としてはいたたまれないくらい、妻にベタ惚れなのだ。

「なんで仕事観と母さんが関係あるんだよ……」
「いろいろあったのさ。……実はな、今の会社には転職で入ったんだ」
父は椅子に座り直して、健太にまっすぐ向き合う。

「え、そうなんだ? 父さんの時代なら、新卒から勤め上げてる人が多いんじゃないの?」
自分が父のことを意外とよく知らないことに、健太は驚いた。
「ああ……。新卒のときは研究室の紹介で就職してな。馬車馬のように働いたよ。そんなんじゃプライベートなんて充実できるわけがない。灰色の生活だった」
「そうだったんだ……」

「でもな! そんなとき、マイナビ婚活*3で母さんに出会ったんだ。
あっという間に意気投合して、マイナビウェディング*4で挙式を挙げてな。
なんせ仕事が忙しいんで優雅に海外でハネムーンとはいかなかったが、マイナビトラベル*5で一泊二日の温泉旅行に行ったよ。楽しかったなあ」
明らかに話が逸れていることに健太は気付いたが、父がなんとも嬉しそうなので言い出しにくい。

「それで母さんのお腹に健太が宿ったとき、父さん思ったんだ。このまま仕事を続けていたら、我が子の成長を見守ることもできないんじゃないかって」
父は子煩悩な人だったから、健太には意外な話だった。その時転職を決意しなかったら、健太の父親像は全く違ったものになっていたかもしれない。

「とはいえ母さんは身重だし、転職で収入が不安定になるかと思うと、踏ん切りがつかなくてな……
そんなとき母さんが言ってくれたんだ。『自分に正直になって。いざとなったら私がマイナビ薬剤師*6で仕事探して、あんたと子供を養ってみせるから!』ってさ」
感傷に浸る父。健太は別のことに気をとられていた。

「えっ、母さんって薬剤師だったの?」
本筋と関係ないことに驚く健太に、父は呆れ顔だ。
「お前、母さんがドラッグストアでパートしてるの知ってるだろう」
「いや、てっきりレジ打ちとか品出ししてるもんだと……」
母は、健太が思っているより凄い人なのかもしれない。

「『この人だって妊娠中で心細いだろうに、悩む僕を励ましてくれるなんて!』って、感極まって泣いちゃったよ……それからというもの、母さんには頭が上がらない」
そう言う父は、やはりゆるんだ笑顔を浮かべている。父が母にベタ惚れな理由が、健太にも少しわかった気がした。

「母さんともよく話し合って、『収入は下がってもいいから、家族の時間が持てる仕事にする。できれば、子供が熱を出したときに、早退できる柔軟さのある職場がいい』って希望を決めてな。マイナビ転職*7に登録したんだ。
最初はなかなか見つからなかったけど、マイナビ転職エージェントサーチ*8マイナビAGENT*9も活用して、やっと今の仕事と巡り合ったんだ」

健太には正直、マイナビ転職とマイナビ転職エージェントサーチとマイナビAGENTの違いはよくわからなかったが、ふむふむと頷いた。そんな細かい話にこだわっている場合ではない。重要なのは、父がマイナビで理想の仕事を見つけたという事実だけだ。

「だから、質問に答えるとしたら……『家族いっしょの時間を持つため』かな。仕事のやりがいとか情熱とか、そういうカッコイイ理由じゃなくてごめんよ」
父はしみじみと言い、少しぬるくなった発泡酒を口にする。

「そんなことない。俺は父さんの話、聞けてよかったと思うよ」
「だったらよかったよ。父さんはな、もちろん健太が目指す仕事に就けたらいいなとは思うけど……一番は、健太に幸せになってほしいんだ」
「父さん……」
「もちろん母さんも、そう思ってるはずだよ」
父は慈しむような笑顔で、健太を見つめる。
健太は思わず、少し涙ぐみそうになって、息を止めてこらえた。





半年後、そこにはリクルートスーツを着て面接に挑む、健太の姿があった。
「では、次に鈴木健太さん。あなたがマイナビを志望した理由を教えてください」
「はい、私は、人々の人生の転機に寄り添いたいと思い、御社を志望いたしました。実は私の父が、御社のサービスでーー」

健太の目は、父を支えてくれた企業への憧れに、キラキラと輝いていた。


おわりです。

吉兆VS不吉の象徴

茶柱が立つ、虹を見る、四葉のクローバーを見つける。これらは縁起のいいことと言われる。

4のゾロ目の時計、黒猫が目の前を横切る、鏡が突然割れる。これらは縁起が悪いと言われる。


他にも縁起にまつわる物事はたくさんあり、
それを気にして縁起をかつぐ人は現代でもたくさんいる。仏滅の日は結婚式場が安いし、三りんぼうの日は引っ越しが安い(縁起が悪いので避ける人が多いため)。



それで、ふと思ったんですよね。
縁起のいいことと悪いこと、戦わせたらどっちが勝つんだろう、と。


吉兆VS不吉の象徴

マッチ1(例題)

例えば日本語では、4は不吉な数字とされている。読み方の「し」が「死」を連想させるからだ。
「死」に通じる数字、めちゃめちゃ強そう。だって「死」より強い概念なんてないもの。

では、これに、対戦相手をぶつけてみる。
クローバー、別名シロツメクサである。🍀。



《結果》
四葉のクローバーは、幸運の象徴である。
→クローバーの勝ち。
《講評》
4、不吉の象徴としてめちゃめちゃ強そうだけど、クローバーに絡むと普通に負ける。幸運の象徴になってしまう。



ここからは答えのない仁義なき戦いです。暇だったらどっちが勝ちそうか、考えてみてください。

マッチ2

下駄の鼻緒が切れる(現代風にいえば、靴紐が切れる)のは、不吉の前触れとされる。

一方、ミサンガが切れることは、願いが叶う前触れであり、縁起のいいことと言われる。


では、鼻緒や靴紐がミサンガで出来ていたらどうなのか? 切れた場合は縁起がいいのだろうか、それとも悪いのだろうか。


マッチ3

ヨーロッパでは昔、黒猫を忌む地域があったそう。
その名残りか、今でも「黒猫が目の前を横切るのは不吉」とする国もある。

しかし日本では、猫は福をもたらす動物だとされてきた。招き猫は商売繁盛やご縁を呼び込む福の象徴とされている。招き猫には白が多いような気がするが、黒い招き猫もたくさんある。


では、黒い招き猫が目の前を横切っていったら、それはどっちなのか?
いや、黒い招き猫が自力で目の前を横切っていったらそれはホラーかもしれないが。例えば軽トラの荷台にのせられた黒い招き猫が通りすぎていったら、それは吉兆なのだろうか。それとも不吉の予兆なのだろうか。


マッチ4

突然鏡が割れたりヒビが入ったりするのは、不吉なことだと言われている。

一方、ちょっとこれ伝わるかどうかわからないけど、世の中には亀甲占いという種類の占いがある。亀の甲や動物の骨を火であぶったりしてヒビを入れ、そのヒビの形から運勢を読み解く占いである。


例えば突然鏡にヒビが入ったが、そのヒビがたまたま亀甲占い的にはすごい大吉だった場合、それはどっちなのだろうか?
やっぱり大吉なのか? それとも、突然だったわけだし、不吉なことなのか?



どっちなんだろう……


おわりに

皆さんも、縁起のいいことと悪いこと、バトルさせてみてください。