トッピングにはたらく重力のこと
トッピング(Topping)とは
ケーキの上飾りなど、料理において仕上げの段階で飾りとなる食品などを盛り付ける調理法。また、その飾り付ける食品などのこと。見た目を良くするためや、味や栄養バランスの調整などのために用いられる。ローソクや人形など食品以外の物を追加する場合もある。
(トッピング - Wikipediaより引用)
トッピングについて考える
トッピングがなぜ「トッピング」かといえば、それはケーキが地球上にあるかぎり重力の影響を受けずにいられないからだ。
重力のはたらきによって、我々はケーキの側面や裏面(お皿やテーブルと接する面)に飾りを「のせる」ことができない。
せいぜいクリームの粘性を活かして、側面に多少のフルーツ等をくっつけるのが限界だ。
かくして、苺やホイップ、チョコプレートやサンタクロースの砂糖菓子が鎮座すべきはケーキの上部である。
ゆえにあれらは頂点に立つ者ーートッピングなのだ。
無重力世界のケーキを考える
裏を返せば、重力のない宇宙空間で独自の製菓技術が発達した場合、側面や裏面を飾り付ける技法も当然生まれるはずだ。
その場合、それらは「サイディング」または「ボトミング」と呼ばれるのであろうか。
あるいは飾り付けの主戦場がケーキの頂ではなくなっても、「トッピング」という言葉だけは残り続けるのだろうか。
「先生、なんでケーキの底面につける飾りなのに『トッピング』って呼ぶんですか?」
「それは人類が地球上にいたころの名残りです。地球には重力があったので、ケーキの上面にしか飾りをのせられなかったのです」
宇宙の製菓学校でそんな会話が行われる日も、いつか訪れるかもしれない。
いや、無重力世界のケーキはもっと自由だろう。球体のケーキを製作する技術は当然生まれるはずだ。となるともはや、上部やら側面やら底やらの区別は意味をなさなくなる。
そうなったら、私はモーニングスターみたいなショートケーキが食べたい。
あれのトゲトゲ部分が、いちごで再現されているケーキ。あるいは金型で絞ったメレンゲでも、さくさくの食感が楽しいかもしれない。
そのころには、私は少なくとも老人になっているだろう。
宇宙生まれのこどもたちとケーキを囲みながら、モーニングスターの由来となった金星の話をーー地球上から見た、明けの明星の話をーーしてみたい。
こどもたちは興味を持ってくれるだろうか。
未来のケーキは球体に限らない。もっとユニークな形のケーキが、次々と生み出されるだろう。
そのうちメビウスの輪状のケーキが作られるかもしれない。ここまでくると、どちらが表でどちらが裏なのかすら決定できない。
トッピングと呼ばれていたものたちは、ただ表面に位置するものーー『サーフェシング』と名付けられるかもしれない。
などということを考えた。どうでもいいことを考えるのは好きだ。
おいしいケーキが食べたい。