※本記事はnoteから移植しました。
ソシャゲのFGOに出てくる「カルデアの夢火」、何か見覚えあるなーと思っていたらエッグスタンドだった。
ゆで卵をのせるためだけの器
エッグスタンド、それは、ゆで卵をのせるためだけの器。
半熟卵をこれに立て、上部の殻をむいて、中身をスプーンですくって食べるために使うらしい。
しかも器に飽き足らず、ゆで卵の上部の殻をむくためだけのカッターまで存在している(エッグシェルカッター、またはエッグオープナーと呼ぶ)。
人類どんだけゆで卵好きなん?
ていうか、「ゆで卵をその食べ方でいただく」ことへのこだわりがエグない?
用途の狭すぎる道具
こういう極端に用途が限られた、「わざわざそのためだけに作ったん?」みたいなアイテムべらぼうに良い。マジで人間ってホモ・ファーベル(道具を作る生き物)なんだな。
しかも、殻がむきやすいように卵に穴を開ける器具や、
電子レンジでゆで卵を作るための器具(普通にレンチンすると爆発する)、
ゆで卵を切るためだけのスライサーまである。
よってたかってゆで卵に何かしようとしている。ゆで卵を道具でなんとかしてやろうという気概がすごい。用途によって細分化されすぎている。
この系統だとバナナスタンドも結構良い。
バナナをかけるためだけの台。
……バナナをかけるためだけの台!?
なぜ人々はそんなにも固有のスタンドを欲しがるのだろう。
ジョジョならわかるけど。
ジョジョのスタンドなら強そうだけど。
いやさすがにバナナをかけるためだけのスタンドは弱いか。いつでもバナナをかけられるだけだもんな。
道具を使うマナーと手技
「用途による細分化」でいうと、フレンチ料理のナイフやフォークが思い浮かぶ方も多いはず。
前菜と肉料理と魚料理とデザートで、別々のナイフとフォークを使う。
なかなかの分けっぷりだ。
テーブル上の名脇役 カトラリー | Table LABO - テーブルラボ
カトラリーの種類については、上記のページがわかりやすかった。
身崩れしやすい魚をおさえるためにナイフの幅を広くしたり、肉を切るために刃を鋭くしたり、バターを塗りやすいよう角度をつけたり。
それぞれ形状に特徴があり、その料理を食べるのに特化したつくりになっている。
快適に使えるよう道具を工夫していった結果、ここまで細分化されたのだろう。
だがそのせいで、1度の食事でカトラリーを10本以上使い分けるなんてことも珍しくない。
となると「どの用途でどの道具を使用すべきか」が細かく決まってくるので、マナーとして覚えなくてはならない。
お箸の「焼き魚から豆腐、汁物まで全部これだけで食べてください。つまみにくい? 使い手の技術でカバーしてください」というスパルタ精神とは真逆の発想。
フレンチと和食では、カトラリーの設計思想が根本から違うのだろう。
いわば、お箸が要求する「手技(非言語的なスキル)を身につける手間」を、ナイフやフォークは道具の細分化によって「言語化されたマナーを覚える手間」に置き換えた、とも考えられる。
この考え方の差異を突き詰めていくと、言葉で説明できない職人技と、明文化された業務マニュアルの対比にもつながっていきそうだ。
ちなみに manner も manual も、ラテン語で手を意味する manus が語源だという。背景とする思想は共通しているのかもしれない。