蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

M-1グランプリ2020 感想

決勝の感想(最終決戦は別記事)

インディアンス

敗者復活組がいきなりトップバッター! 正直気持ちの準備する時間なんかなかったと思うけど、しっかりエンジンかかっててさすがプロだなと思った。
パワー系のボケで場をあたためていける人たちだと思う。そう考えるとトップバッター適性あったよね。

ボケが次々繰り出されて止まらない。ツッコミの言い間違いをつついてボケに展開していく構成とか、ボケ数を増やす工夫がされててすごい。アドリブ演奏みたいなリズム感とスピード感。
「うるさいねん!」のタイミングがぴったり。

東京ホテイソン

同世代やん……SNSで出会ったコンビとか、めちゃめちゃ今っぽいな。
この人たち着眼点とワードセンスが卓越してるなーと思う。ワードの珍妙さがまず面白いし、ツッコミの人のやたらダイナミックな言い方が跳躍力をプラスする。うまいんだけど力技で笑わせてくるみたいな、独特なパワーがある。
ツッコミの人の声、特徴的でいいな。ボケの落ち着き具合とのバランスも素敵。ただM-1の場では若干ふたりの声量の違いは気になった。

テーマが謎解きなの、攻めてるなー。この場であえて複雑なことをやる!
こっちが暗号を解こうと頭を働かすと、それを上回る速さでツッコミが入る(答えが提示される)。すると、暗号を解くための認知的資源が余剰となり、笑いのエネルギーとして解放される。
ただ巨人さんの指摘もごもっともで、人によっては置いてきぼりに感じるかも。あと、あらかじめボケを知ってないとあの速さで答えを出すのは絶対に不可能なので、そういう意味で自然な掛け合いじゃないと評価されたのかな。

圧倒的なスピード感と答え合わせの爽快さ、ジェットコースターのようだった。ある意味行き急いでるところに若さを感じて個人的には好きでした。

ニューヨーク

ほんとにこなれた漫才する人たちだな……器用で上手。
目のつけどころが「コンプラ」で、細かい犯罪のデパートになってるのがニューヨークらしい小さな悪意に満ちてる。

こんな悪い笑いなのに、取り上げる犯罪をヤバくしすぎないで変なとこで善行させるとか、あくまで悪いことをツッコミが指摘する立場をとるとかで安全策とってるバランス感覚もすごい。こなれてる~!
なんていうか、「スクールカースト高めの人の性格悪さ」って感じ。立ち回りがうまい。ウエストランドとはまた全然性質が違うな。

塙さんのコメントで気づいたけどこれ時事ネタなんだな……そう考えるとすごい。細かい時事ネタを拾ってきれいにまとめあげてる。

見取り図

マネージャーのネタ。ツッコミの盛山さん、ハチャメチャに振り回されて文句言ってるのが映える人だなあと感じた。
ボケのレパートリーに自由度があって、いろんな種類のボケを繰り出してくる。でもうまいこと伏線を張ってたりして、内容にしっかりまとまりもある。4分間の枠組みの中でネタが練り上げられていて、きっちりM-1用に仕上げてこられたんだなと感じた。ここに賭けてるんだな。

そして、そのネタを漫才師としての力量が支えている。ふたりとも上手い。スタイルは(特に盛山さんは)往年の上方漫才師な感じ。

おいでやすこが

ピン芸人の即席ユニット! 芸歴制限でピンの大会出られなくなったふたり。マジで今後報われてほしい。

こがさんの歌うっまいな~と思いながら見てたら、小田さんのキレ方の爆発力に全部持っていかれた。シンプルにめちゃくちゃ笑った。
シュールなボケとキレ芸の落差ったらないのに、相性が最高なんだよな。キレ芸なのに絶妙に怖くないのも良いところだ。

掛け合いの巧さってどうしてもコンビ経験に依る部分があると思う。同じコンビでずっとやってるうちにチューニングが合っていくというか。
でもこのふたりは個々の得意技をモジュールとして組み合わせるかたちで成立させてるので、ピン芸人の即興コンビならではの面白さになってる。
M-1もう16回目でまだこんな発明的なやり方あったんだ。

マヂカルラブリー

つかみ「どうしても笑わせたい人がいます」最高だった。それも含め、色々の顛末やキャラクターを知られてることが、すごくプラスに働いていたと思う。
彼らはキャラを知っててこそ面白いというか、もうボケる前から絶対変なことしてくれるって期待できる。しかも手の内はもうだいたい知ってるはずなのに、実際ネタ見てみたら全然想定を越えてくる。

マヂラブらしいパワフルなスタイルで、場を荒らしまくっていったのが良かった。
細かいことを言うと、最初の場面設定までを丁寧に振って、漫才内コントの終わりの合図(食器を斜めに置くジェスチャー)を設定してるところがうまかった。あれのおかげで要所要所が締まって、ネタが見やすくなってたと思う。

オズワルド

ツッコミが言い方もワードセンスも独特で印象に残る。あの空気感いいな。
ボケの応答が微妙にズレるところが特に好きで、
「絶対入れられないよ」
「試合前のゴールキーパーはみんなそう言うんだよ」
「今は雑魚寿司の話だろうが!」
のやり取りにめちゃめちゃ笑った。

どんどん奇妙なシチュエーションのありえない話になっていくんだけど、いきなりぶっ飛ぶんじゃなく、少しずつズレが積み重なって話が変な方向に傾いていく感覚が面白い。

後半に向けてテンション高まっていく構成、賞レースに合わせた調整で上手いなーと思ってたけど、プロの審査ではウケがよくなかったみたい。
もっと個性を通すか、もっと漫才らしい漫才にするかを求められたのかな。

アキナ

山名さんの喋り方が初っぱなから「口では迷惑言うてるけど嬉しくてしゃあないやつ」そのものでリアル。漫才内コントでキャラを演じるだけでなく、『キャラを演じた状態で漫才をやっている』。
山名さんは「好きな女を意識してイキってる漫才師」を演じてネタを進行している。そこからさらに漫才内コントでの演技が重なる。
秋山さんのツッコミはそれに呼応して、ボケにツッコんでいると同時に、「イキってる漫才師」キャラへのツッコミになっている。
なんかよく見るとかなり複雑で多層的なことをやろうとしている。

ただM-1の特性上、ネタのためにキャラクターを演じる漫才(キャラ芸人のことではなく、ジャルジャルの「続き知ってるから飽きた漫才師」みたいなメタ系)あんまりハマらないのかな。

構造が複雑な一方、題材はベタに「女の子にええかっこしたい」。これ、ほぼ同じ内容でシチュエーションが「親が見に来るから良い所見せたい」「子供が見に来るから格好いい姿を見せたい」とかのほっこり系だったらまた印象違ったんかな。
微笑ましさが乗っかると、聴衆の受け止め方も変わりそう。個人的にはその方が今っぽいと感じる(今風じゃなきゃいけないわけじゃないが)

錦鯉

M-1にまさかのパチンコネタ。とにかく構成もボケもシンプルで、明るくて分かりやすくて元気。
同じギャグを3回やってたので耳に残っている。

シンプルすぎて逆にどう受け止めていいか最初わからなかったけど、フォロワーの感想見て合点がいった。
錦鯉は、明るいおじさんがとにかく元気に変なことを全力でやってくれる、こっちはそれを何も考えないで楽しむ、そういうコンビなんだな。きっと老若男女関係なく笑えるし、安心感があるんだ。

賞レースに向けた調整とかをあまり考えず、自分たちらしさを出しきってたのがすごい英断だと思う。

ウエストランド

ツッコミの井口さん、己のいびつさを剥き出しにしていく攻撃的な漫才スタイル。
いきなり不倫ネタを淡々とぶっこんでくるあたりからして、「賞レースの場でもひよらず、自分らしさ全開でいくぞ!」って気概を感じました。
そういうユーモアが好きな層にはウケるだろうな。

自己言及のところ(悪口漫才師、復讐劇)は面白かったです。身を削ってる……
つかみは「マッチングアプリに詳しい」だったけど、内容はわりと井口さんの空想上の女子像の話だったな。実体験が入ってればまた違った印象になったかも?



ちなみに一番笑ったのはおいでやすこがでした。

つづき