※本記事はnoteから移植したものです
基本的に全組褒め称えます。採点とかはしません。ネタバレあります。
第一ステージ
滝音
コンビ名はタキオン(超光速の粒子)と掛かってるのだろうか? 今回初めてネタを拝見しました。
最初のやりとりで「不機嫌で無愛想だけど何杯も食べる客」と「いちいち話しかけてくれる店員」の構図でキャラクターや関係性を想像させておいて、
強いツッコミで一気に状況(大食い大会)が明らかになる展開が好きだった。
無愛想で静かな態度から、急にテンションの高いツッコミに切り替わるギャップが面白かったです。
あとは店員の熱い語りが「でも餃子に気持ちはないからどうでもいい」に終結した所と、それに対する「着地点見ながら喋って」ってツッコミも好き。
GAG
中島美嘉をあの感じで描いてくるのヤバい。
入れ替わりってかなりベタな設定だと思うけど、「本人たちは入れ替わりに気づかず、観察者だけが気づいてあたふたする」方向性はトリオならではだと思った。
最後キャラクターがごちゃごちゃになって、フルートと入れ替わったおじさんが全然音出てなかったの笑った。
ロングコートダディ
「筋肉すごいですね」「俺バカだから」のやりとりがだんだん効いてくるのが好き。
最初は全然成立してない会話に思えるし、「筋肉バカ」的な偏見の話をしてるのかと思いきや、
先輩の行動を見てると「本当にバカだからムキムキになった」という因果関係が明らかになってくる。これトリックとしてはかなり高度では?
先輩が「ABCDという順番なのは俺だってわかる!」と激昂するところや、「DがAなら良かったのにな」と呟くところもめちゃくちゃ良かった。要領の悪さの表現としてあれを思い付くのがすごい。
後輩が箱を持ち上げられないオチも、シンプルだけどうまい。先輩があの要領悪さでも働けてることに合点が行くし、バカにしてたけどあの先輩が結構凄かったとわかる。
単純な構造のネタに見えて、分析してみると結構技巧的な気がする。意外と風刺ネタとかもできるのでは?
空気階段
霊媒師自体はよくある設定。でもよく考えたら、なんで「霊媒師に再会を依頼する」とかいうほとんど誰も体験しない状況がベタなんでしょうね?
よくあるのは霊が降りてこないとか別人を降ろしちゃうとかだと思うんですが、これはラジオと混線する設定。一瞬Spotifyの広告が挟まったのかと思った
スマホよりおじさんが早いとか、断片的な会話の内容が気になるとか、長いステッカーのボケが後から回収されるとか、細かいラジオネタの使い方が上手くて面白かった。
後半の、自分の声がラジオで流れる→おじさんも共鳴する→怖くなって電話を切る、の流れもすごい。入れ替わったみたいで怖くなる若者の気持ちもわかるし、ラジオのファンなのに電話できなかったおじさんにも同情できる。
声を完全に合わせるのも相当シビアだったろうな。本番では絶対失敗できないし。
ジャルジャル
ジャルジャルのネタは、ベタなようで見たことない設定なのがすごい。ゲーム性があるというか。
売れない歌手、陳腐な歌詞、うさん臭い事務所の社長、ヤジ、演技とガチ、など要素自体は既視感があるのに、
それらが合わさった結果「鹿沼さんとしてなのかおじさんのヤジとしてなのか迷う」という独特の論点に至るのが面白い。
鹿沼さんのコンパクトな悪口3点セットとか「どうせ届けんねやろ!」って曲を知ってる人のヤジとか、細かいボケも良かった。
ザ・ギース
賞レースでハープ持ち出して弾き始めるのほんとに意味わからない。好きすぎる。
個人的には大好きな展開だしハープが弾けてこそ成立するので他の人にはできないネタだと思うが、これをキングオブコントにかけたのがすごい。
ベタな「バンドマンと元舞台俳優」に見せかけて「ハープ奏者と切り絵師」という裏切りはインパクトがあって見やすいし、2人のリアクションもはっきりしてて分かりやすかった。
ボケ自体は突然ドンキホーテのテーマ弾き始めたり小田和正のジャケ写だったり、つながりや伏線回収は意識せず、ほんとに自由にやってた印象。楽しそうな感じが好きだった。
うるとらブギーズ
陶芸の師匠が作品叩き割るベタな設定。これもなんでこんなコアな状況がベタなんでしょうね?
良い作品まで割っちゃうとか、弟子にけなされてへこむとか、展開自体も変わったものではないんだけど、うるとらブギーズがやってると雰囲気がすごく良い。
本当に楽しそうに見えるんだよな。ネタやってる2人が楽しそうなのはもちろん、コントに出てくるキャラクターたちが楽しみながら会話してる感じが伝わる。
ニッポンの社長
「ボーイミーツガールで歌を歌い出す」という構造に全振りしていく潔さ、相当な胆力の証だと思う。ボケの手数増やせないし途中で調整が利かないネタをあえてやる強さ。個人的にはかなり好きだった。
なんでケンタウロスとミノタウロスがこの世に生まれたのか、なんでふたりが恋に落ちたか、なんでキスすると声が入れ替わるのか、よく考えたら何も説明されてないんだけど、
ビジュアルの強さと恋のパワーで無理やり説得してくる感じが良い。
ニューヨーク
どんどん余興の内容が大がかりになって、結婚式の趣旨から外れていき、周りの人が引いていく。シンプルだけどシンプルだからこそ力強い展開。
ボケ数は多くなくても個々のボケの絵面に力があるし、ボケもツッコミも分かりやすい。
ネタの構造とはっきりした強めのツッコミがよくマッチしてるなと思った。
ジャングルポケット
「秘密を吐かせるために子どもを引き合いに出す」という始まりこそベタなものの、そこからの展開が多彩で面白かった。
娘のことを調べすぎて父さえ知らない情報が出てくる、知らない人の不倫関係が気になる、唐突に一旦暴力に戻る、相関図に現れた謎の留学生。
それぞれ方向性の違うボケなのに、流れとしてきれいに繋がっている。
追っ手が帰ったあともこの人は「あの2人不倫してるのか……」「アンドリューって誰なんだ……」と気にしながら生活することになるんだろうな、と想像できる余韻も好きだ。
個人的には3人とも息が合ってると思えたし素直に笑えたので、設楽さんが指摘したズレは気にならなかった。むしろ客数の少ない(笑い声が小さくなりやすい)環境で、ハイテンションなネタに挑んで実際面白くてすごいと思った。
ただ、現場にいてこそ、プロだからこそわかる違和感もあるんだろうと思う。
ファイナルステージ
空気階段
恋に落ちる瞬間を描いたシンプルな構成だが、設定が定時制高校。キャラクターにあれを持ってきたのはズルい。あんなの見たことない。
高校生同士の甘酸っぱい青春を素直に描くのだが、何喋ってんのかわからない強烈なおじさんの存在で全てが違って見える。人生でそこそこ色んなことを経験してそうな女性のキャラクターも良い。
最初はおじさんのヤバさで笑わせるキワモノ系のネタかと思ったが、だんだんおじさんの礼儀正しさや愛嬌あるキャラクター、作曲を頑張る一面などが見えてきて、女性がこの人に恋した理由に納得がいき始める。
それとともに、おじさんが喋ってる台詞がだんだん『聞こえる』ようになる構成も見事。「教えなーい」とか「俺が好きなのは、お前」とか、確かに聞こえたんだよな。
最後のほうはマジでちゃんとしたラブストーリーとして成立してた。あれは本当に、恋の尊さを描いたネタなんだと思う。
ニューヨーク
髪を切りすぎて帽子を脱ぎたくない男と、帽子を脱がせて髪型を見たい男。どっちもタイミングを逃して引くに引けなくなり、帽子を脱ぐ脱がないをめぐって張り合う。
帽子を脱がずに引っ張ったために(変な髪型のハードルが上がって)余計脱げなくなる、
言い出した手前帽子を脱がせるまでは諦めない、という両者の力動は共感を誘うあるあるだが、
その緊張関係をやくざ者の命の張り合いになぞらえたのがすごい。
確かにそういう「引っ込みのつかなさ」、やくざと相性が良い。髪型が全然普通なのも良かった。
ジャルジャル
府る泥棒2人組のネタだが、全然見たことない展開をする。
空き巣やるのにタンバリンと笛を持ってきたり、金庫開けたらタンバリン2個と鈴だけが入ってる大ハズレの会社だったり、冷静に考えるとかなり不条理な状況が生じている。
にもかかわらず、なぜかすんなり飲み込めてしまう。変な状況なのに全く浮いてない。
福徳さんの役割が舞台装置めいてるところもすごく良かった。すぐ「絡まってる!」とパニックを起こしてタンバリンを鳴らし始めるけど、抱きしめたら止まる。スヌーズ機能つきの目覚まし時計だ。
やってることは単純な天丼に見えるのに、繰り返すほど的確に面白さが増していくのがすごすぎる。勘所が確実に掴まれている感じ。
これを、コロナでネタやる機会の少なかった今年に仕上げてくるのがヤバい。真性のお笑いフリーク。
最後の「自分だけでも逃げようとしたけど弟子を置いていけず、パーティー感を出しながら逃げる」ってオチがめちゃくちゃ好きだった。
あの弟子、アホやけど絶対素直でかわいいやつなので……
全組面白かったです。