蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

マグロでわかる!比喩法

比喩ってあるじゃないですか。ものごとを、それに似ている別のものごとでたとえて表現するやつ。
燃えるように熱い、きみは天使のようだ。これらは「ようだ」「ごとし」などの言葉を用いてたとえる手法で、シミリ(直喩)と呼ばれる。
比喩だよ!って直接わかるようにたとえるのが直喩。



でも実は、それ以外にも比喩にはさまざまな手法がある。なかにはパッと見で比喩だと思わないような比喩表現もある。
「今日の晩御飯は鍋!」←実はこれも比喩です*1
比喩、めちゃめちゃ奥深くて面白いんです。



でも、さまざまなジャンルがあるからこそ難しい。
まず、どんなジャンルがあるかがよくわからない。なんかいっぱいあるらしい。
そんでどんな例がどの比喩法に分類されるのかもよくわからない。境界上の例がけっこうあるのです。

例えて言うなら、「トロピカルハウスとダンスホールレゲエの違いって何??? いま流れてるこの曲はどっちなん???」みたいなことです。ニュアンスで感じてください。



そこでちょっとだけ比喩について、ブログで解説してみたいと思います。
自分で調べてみた範囲で、ほんとに初歩的なことだけですが。




マグロでわかる!比喩法

  • メタファー(隠喩)
  • メトニミー(換喩)
  • シネクドキ(提喩)

比喩法のうち上の3つについて、マグロで説明します。

マンガじゃないです。
マグロです。
おいしいですよね、マグロ。
マグロならみんな親しみがあるかなと思って、マグロにしました。


メタファーとは何か

デジタル大辞泉では、メタファー(隠喩)について以下のような説明があります。

比喩法の一。「…のようだ」「…のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴を直接他のもので表現する方法。(後略)

「きみは天使のようだ」なら直喩、
「きみは天使」なら隠喩ということです。



ちなみに、コトバンクのブリタニカ国際大百科事典では、より詳しい説明が載っています。興味ある方は。
隠喩とは - コトバンク

では、具体的にどんな表現をさすのか、マグロで見ていきましょう。


メタファーとしてのマグロ①

能動的で積極的、いつでも活発に行動している人のメタファー。
泳ぐのをやめると窒息してしまうため、眠っているときでも泳ぎ続ける性質に由来する。

使用例:「あの人はマグロだから、立ち止まったら死んじゃうんだよ」


メタファーとしてのマグロ②

受動的で消極的、自分から動かず、相手の行動にも無反応な人のメタファー。
たぶん冷凍マグロに由来する。

使用例:「あいつはマグロだから楽しくない」


マグロの生死によって、メタファーとしての意味が180度変わるのがかなり面白い。究極の二面性。


メトニミーとは何か

次にメトニミー(換喩)。
デジタル大辞泉での説明はこう。

比喩法の一。ある事物を表すのに、それと深い関係のある事物で置き換える法。(後略)

メタファーが「似ているものにたとえる」のに対して、「関係あるものに置き換える」方法がメトニミーです。
例えば、王になることを「王冠を戴く」、アイドルをやめることを「マイクを置く」というのもメトニミー。王と王冠は深い関係にあるし、アイドルとマイクも切り離せない。
「鍋」という容器で、鍋の中身の料理を表現するのもメトニミーです。

もう少し詳しい説明はこちら。
換喩とは - コトバンク


メトニミーとしての築地

マグロといえば築地、築地といえばマグロ。
というくらい、マグロの競りは築地卸売市場の代名詞でした。
10月6日、中央卸売市場は豊洲に移転しましたが、やっぱりまだまだ「豊洲のマグロ」より「築地のマグロ」のほうがしっくりくる気がします。



実はこの「築地のマグロ」という言い回し自体、メトニミーを含んでいます。

ここでの「築地」は、単に地名としての築地ではなく、「旧・東京都中央卸売市場」を指しています。卸売市場を、深い関係のある所在地・築地で置き換えているわけです。



似た例としては、官庁をまとめて「霞ヶ関」と言ったり、国会や政治の世界を「永田町」と呼んだりすることがあります。機関を所在地で置き換えて表すのは、あるあるらしいです。


シネクドキとは何か

3つめ、シネクドキ(提喩)について。
デジタル大辞泉の説明はこう。

比喩法の一。全体と部分との関係に基づき、「花」(全体)で「桜」(部分)を、「小町」(部分)で「美人」(全体)を表現する類。

メトニミーとの違いがちょっと難しいですが、
カテゴリ全体で一部のものを表したり、逆にカテゴリのなかの一部で全体を指し示したりするのがシネクドキです。

「花」は本来、花全体を指す言葉で、梅や椿などいろいろな花も含む。しかし、「花見」が指す花はふつう桜だけです。「花見に行こう!」ってたんぽぽ見に行くことはほぼない。



反対に、一部で全体を指せる表現もあります。
「小町」は美人のひとりですが、美人全体を指すことができる。
「ごはん」は本来お米を炊いたやつですが、おかずも含めた食事全体を指せます。なので「朝ごはんにパンを食べた」という表現もできる。

もう少し詳しい説明はこちら。
提喩とは - コトバンク



もちろん、なんとか頑張ってマグロでも説明します。


シネクドキとしての漬け丼

前提に、まず親子丼の話をさせてください。

「親子丼」は通常、鶏と卵の丼のことです。
たぶん親子丼になってる鶏と卵は本当に血縁があるわけではないし、
逆に成体と卵(または幼体)の関係にある動物は他にもたくさんいますが、それを親子丼と言うことはあまりない*2

つまり、「親子」というカテゴリ全体で、「鶏と卵」という一部を表しています。よってこれはシネクドキ。



「漬け丼」も、似たことが言えます。

「漬け」は本来、漬ける行為や漬けたもの全般を指す言葉。サーモンの醤油漬けもたくあんも奈良漬けも、漬けといってもいいはずです。
しかし、「漬け(づけ)」というときにはふつう、醤油に漬けた赤身のマグロのことを指します。

全体を指すはずの言葉で、特定の一部のものだけを指している「漬け丼」という言い回しは、シネクドキといえるんじゃないでしょうか。


余談

以上で「マグロでわかる!比喩法」を終わります。
マグロでわかっていただけたでしょうか……。

余談ですが今回ブログを書くために、いい例がないか「マグロ メタファー」「鮪 象徴」とかでググってたら、やたらと映画『シェイプ・オブ・ウォーター』の解説記事が出てくる出てくる。
中身読んでも主役の彼がマグロモチーフなわけでもないし、「マグロ」「鮪」でページ内検索してもヒットしないし、なんでかなと思ったら

ギレルモ・デル・トロ監督

デル……トロ……



トロ!!!



Googleってそういうお節介なところありますね。

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*1:あなたが晩御飯に、行平鍋や土鍋をばりばり喰う人でなければ

*2:「サーモンといくらの親子丼」「マトンとラムの親子丼」とか、ちゃんと前置きすれば可能ではありますが