蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

オリラジ藤森ファンがヒプマイポッセのドラマCDも聴いた話

藤森慎吾作詞『シャンパンゴールド』をきっかけにヒプマイが気になりはじめ、はや半年。
ついに各ディビジョンのドラマCD4枚、全部聴きました。
もちろんBBBも買いましたバロバロバロ……だってひふみんが出るからね!

というわけで4枚目、シブヤディビジョン・Fling PossのドラマCDの視聴感想を書こうと思います。
ちなみに他ディビジョンの視聴感想もブログで書いてますのでよかったら見てください。

参照した情報

1.シブヤディビジョンドラマCD
2.公式ホームページのキャラクター設定

バトルCDは未視聴です。全く知識のない状態で感想書き終わってから見ようと思う

キャラクターについて

  • 「幼い見た目」「自分がどう見られているか分かっている」「天真爛漫で遠慮がなく、空気を読まない発言」「持ち前の可愛らしさ」……これわかる人には闇がわかるタイプのキャラデザ。不利な状況で周囲のとの衝突をうまくかわしながら生き抜くための武装ですよね? クソ前時代的な会社でセクハラクソ上司と彼氏面クソ男性先輩と出世を諦め部署を牛耳ることに全力のお局の板挟みになりつつ、なんとか衝突を起こさず全員に愛想よくやり過ごそうとペルソナの自分を作り上げる一般事務職24歳契約社員(手取り17万)のキャラデザじゃん。このキャラクターがやばい!2018を贈りたい
  • 「頭をなでると、笑顔でキャンディをくれる」もやばい。頭撫でられる機会が多くて、その対処を予め決めてるってことだよね? 頭撫でられるって、信頼してるか尊敬してるか好意持ってるか以外の人にやられたらだいぶ嫌だしムカつくと思うんだよね(個人の感想です)。その笑顔の裏にはどんな感情が隠されているのか
  • しかも24歳ってのがまた絶妙ですね。ちょうど今後の身の振り方がうっすら気になりはじめる時期
  • 書生をベースに平安貴族をミックスしたような服装だな
  • 「説得力のある嘘をつく」「相手が信じ込んだところで、「まぁ嘘だけどね」とからかう。」なんていうか……誰もが中二病のとき一度は罹患したよね。でもそれを貫いて作家にまでなるのはすごいよな。しかも誕生日エイプリルフールだし。嘘に人生を賭けてるってこと……?
  • 7月7日生まれ177cm77kgって、ドラえもん方式の数値の決め方だな ダイスには7無いやんけと思ったけど、表と裏の面を足し合わせるとすべて7になる=スリーセブンってことか
  • 「自分の命すら賭けのテーブルに載せるギャンブル狂」「生まれもっての強運」 この、たまたまこれまで運良く生き残ってきたけど明日は死ぬかもっていうキャラデザ
  • ダイスって読みが特殊だし、漢字が帝に統べるなんだよな。帝王学教え込むような親の元に生まれたが家出して、本来の読みとは異なるダイスを名乗っている説(ただの妄想です)
  • 食べ物くれたらなつくやつ、ぜったい理鶯と相性良さそう
  • 名字が全員小説家ですね。飴村行、夢野久作有栖川有栖……そこそこグロい作風?

Fling Posse 『F.P.S.M』

飴村乱数『drops

drops

drops

なんか爽やかというか、それほどラップ感が強くなく、むしろ男性アイドルっぽい楽曲ですね。サビの後のラップパートさえ攻撃的な言葉遣いがない……逆に気になる
あと歌うまいな声優の白井悠介さん……

明るく甘い歌詞だけど、すごく刹那的。
「拾いたければ拾えば」なんだよね。自分からは歩み寄らない、お前がいてもいなくてもどっちでも構わない。
何でも全て手に入り、思い通りにできてしまうがゆえか。それは乱数が望んだことなんだろうけど、でも一体どんな気分なんだろう。


夢野幻太郎『シナリオライアー』

シナリオライアー

シナリオライアー

ごめんやけど言わせてくれ、自己紹介やん
ほぼ喋ってるやん

バックで流れてる音楽がかなりシリアスな感じで好み。ていうかこの冷たく重くシリアスな音楽でないと、喋ってる感じがマジで浮くと思う。楽曲と語りの両方のバランスで成立している。作曲家は天才

歌詞がまためちゃくちゃ重たい境遇なんだけど、なんかいろんな文豪の作品を下敷きにしてる気がする。例えば冒頭は「雪国」、拾われるのは「吾輩は猫である」とか……それくらいしかわからなかったけど、読書家ならもっと気付くかも?

サビ?の繰り返されるメロディ部、3つくらい声を重ねてる? 声優の斎藤さんの地声と高い裏声を重ねてるような……こいつもトリプルフェイスなのか? もしかして

「まあ、全部嘘なんだけどね」 歌詞カードにないのかこれ!!! シナリオライアーめ……


有栖川帝統

3$EVEN

3$EVEN

なんていうか、他のふたりの後に聴くと圧倒的に素直な曲だな。オラオラしていても、なんだかかわいらしい感じだ。

本当にギャンブル好きなんだな。勝つか負けるかに命賭けてるときに、生の実感を覚えるタイプなのだろうか。「当たれぇー!!」の切実さがつよい。

こんなこと言うの失礼かもしれないけど、有栖川帝統くん、夢オチがクソ似合うな


ドラマパート

  • 乱数の女たち、ものわかり良すぎないか? あくまで遊びと割りきっている、互いに嫉妬や喧嘩もし合わない、アイドルのファンみたいにキャーと言っている。乱数も女たちも役割を演じてるみたいに感じる。乱数が特定の相手を作らないと承知の上で遊んでいるのか。
  • 「ゲンタルォオ……?」突然カタコトに
  • 「真実を話させるリリックを聞かせちゃうからね?」クソヤバやんけ乱数……「いまからあなたに自白剤をお注射しちゃいまーす♥️」って言ってるのと同じやぞお前
  • 正体を明かすってことは、本心を話させるリリックを忌避したってことか……幻太郎に本心はあるんだろうか
  • 「もう幻太郎って呼んでいいよね?」距離の詰め方がエグめ
  • 勝手に何でも屋に依頼して、接触する相手を下調べして、極私的な話題に平気で踏み込む。相手を支配し優位に立たないではいられないのか?
  • 幻太郎や帝統が断るために自分を低く言うと、即座に「思いやり」「僕に気を遣って」って返すのすごいな。テクニックならすごいけど、本気でそう思ってんならもっとすごいぞ
  • 雑魚を失神させるセンスを持ちながらスリルと興奮を感じられなかったが、乱数から攻撃を食らったら「面白くなってきた」「生きてる感じがする」……勝利に喜びを感じず、負けるかもしれないことや痛みに生の実感を得る人なのか。それを即座に見抜いてどちらかが倒れるまでやろうと持ち掛ける乱数、やはり支配する側の人間だ
  • 帝統の信じる神の存在を否定する乱数。それ自体を賭けにして、神の不在を証明しようとする。「全存在を賭けるよ」と言ったのは、後悔させない自信があるからか、嘘なのか、それとも自分を簡単に投げうてるほど刹那的なのか
  • 幻太郎の熱くて透き通ったリリックは、彼の本当の思いなのか、それとも全て嘘なのか? どんな手を使ってでも笑わせたい人……
  • 幻太郎、一人称が一言ずつ変わるんだ
  • 乱数、あんまルール聞いてなさそう
  • 幻太郎やっぱり相当な人気小説家なんだな。乱数もぽーんと10万出せるってことは売れっ子デザイナーなのだろう
  • 倍プッシュ夢野 でも帝統が言えば負けがこんでる人っぽいだろうに、幻太郎が言うとその場の空気に合わせた発言をしてる感じがする
  • 帝統、負けてコミカルなの似合うなー
  • これ乱数と幻太郎はイカサマだったのか、出目を操る技術を一発でマスターしたのか、本当に偶然なのか? 幻太郎はマジでイカサマじゃなかったらいいよね……だからこそ自信を持って「疑うなら全部調べてみなさい」と言ってるならいいよね……
  • そこで納得しちゃって結局調べない帝統。あわあわしていてかわいい
  • スムーズな土下座
  • もう身内のことなんだ……幻太郎やさしいな
  • カイジのときの藤原竜也のやつじゃん
  • 臓器本当に売るつもりだったんか!? ひとつふたつなくなっても死なない! じゃないよ!

考察

乱数の「神の否定」が大胆だと思った。あれは単に帝統を引き込むための発言だったのか、それとも乱数自身の信念なんだろうか。
出目という賽子の神様が決めた運命を、自分の力で覆す。これはたぶん賽の出目だけじゃなく、乱数の人生で一貫した態度のような気がする。彼は自分の道や在り方を、自分で決めてきた人なのかもしれない。運命に左右などされまいと、自分で自分の生き方を、そして周囲の人間たちをデザインしてきた人なのかもしれない。欲しいものは何でも手に入れ、いつでも優位に立ち、それらを掌の上で操る人。

にもかかわらず彼が世界をつまらないものと感じているのが皮肉だ。何でも思い通りになるからこそ、かえってつまらないのだろうか? 刺激がほしいから、世界を変えようと思ったのか?


あるいはもっと高次の視点から、「このつまらない世界を変えよう」との発言がなされたのか?

もしかしたら乱数は、自分自身の存在、自分の人生を、エンタメと捉えているのではないか? 自分の人生をひとつの作品と捉えて、小説家的な神の視点から、「この人生は困難が設定されていなくてつまらない」「この展開は読めてしまってつまらない」と批評して、それを変えようとしているのではないか? 自分の周囲の世界を、面白いエンタメ作品に変えようとしているのでは?

幻太郎や帝統の情報を掌握して、強引かつ巧みに交渉して、乱数と仲間になるというルートに引っ張り込むところなど特にそうだ。他人の人生を操るさまは、まるで物語の登場人物を動かす作家のようだ。
仲間にしたのも勝ちたいからとか、どうしても仲間にしたいとかそういう感じではなさそうだった。「バックグラウンドが面白くて、登場人物として厚みがあり相応しいから」ふたりを選んだということはないか?

だとしたらすごく、刹那的な人だと思う。
自分にとって面白いからとか、興味深いと思ったとかならまだいい。そこには自分の興味が存在する。確かにその人に、心を動かされている。
だけど、エンタメ作品として、客観的に面白くするために行動しているとしたら、そこに自分自身が心底感じる気持ちはないとしたら、本当に刹那的な人だ。



帝統についても気になる点がある。
彼はもしかしたら、負けることを望んでいるのかもしれない。
命を賭けてまでヒプノシスマイクを得て、並みの相手を即失神させるほどのセンスを持っていたのに、彼はそれを面白く思わなかった。勝利体験に喜びを感じることもなく、スリルや興奮がないと醒めてしまった。
だが乱数とやり合って、ダメージ受けて初めて、「生きてる感じがする」と興奮を覚える。
彼が得たいのは勝利やお金ではなくて、敗北とか痛みとか、「負けるかも、死ぬかもしれない」というスリルなのかもしれない。

それにギャンブルがそこまで強いわけでもなさそうだったのもある。ギャンブラーのわりにすごく素直だし、感情豊かだし、途中で勝ちを確信してるし、イカサマを疑ってもすぐに諦めていた。そこまで貪欲には勝ちを狙っていなさそうだった。もちろん身内とやるから気を抜いていただけで、命懸けのときは全力なのかもしれないけど。

もしかしたら帝統は意外に何でもセンスでできてしまうタイプで、あえて負けられるギャンブルにはまってたりってことはないだろうか。



それと最大の気になるポイント、幻太郎の一人称が次々変わるところ。しかも夢野幻太郎って名前自体おそらくペンネームで、しかも嘘つき設定で、確定的な情報がほとんどない。
「小生」「余」「麿」「僕」……ドラマトラックだけでもこれだけ出てきた。しかも明確にキャラが区別されている一二三とは違って、一文ごとに一人称と声色が変わったりする。

これで思い出したのは、何故かデカルトだった。「我思う、故に我あり」でお馴染みのデカルト
確か『ハーバード白熱教室』で、これを題材にしたコラムがあったのを覚えている。
「我思う、故に俺あり。私が感じる全てのものが僕の夢にすぎぬとしても、それを疑う拙者は確かに存在する」みたいなの。

思考という現象が存在しているのは確かだ。ならば思考の主体が存在していると考えても、別に良いかもしれない。でもその主体は、果たして本当に自己なのか?

ましてやその主体が、連続性のある自己である保証はどこにもない。
我が確かにあったとしても、次の瞬間には融けてなくなるかもしれない。その跡地に今度は「俺」が入るかもしれない。次の瞬間、俺は「私」に変容するかもしれない。
そんな内容のコラムだった。


自己の連続性の不確かさ


幻太郎はそれを意識して、わざと一人称をブレさせているのではないか?
確固たる連続した自己など存在しない、自己はすぐに変容してしまうという、刹那的な信念に基づいた行動なのかもしれない。

帝統の負けをチャラにしてやったことも、もちろん身内に優しいのもあるのかもしれないが、借金という「今ここで出来た借りを後々別のところで返す」システムが合わなかったのもあるかもしれない。


なんとなく幻太郎の嘘のつき方も、連続性を忌避しているように思える。
嘘をつき続けることはほとんどなく、相手が本気にした時点で嘘だと明かしている。その時ついた嘘はその時のうちに明かしてしまう。持ち越さない。


これはもしかしたら、青年の存在*1が影響を与えているのかも、と思う。

青年は難病でずっと入院しているという。
病状は不明だが、もしかしたら、いつ亡くなるかわからない状態かもしれない。
そうでなくても容態が急変したり、幻太郎の方に何かあったりして、もう二度と会えなくなる可能性も、十分にある。

その時にもし、嘘をついたままだったとしたら。
今度会ったときに種明かしをしようと思っていたとしたら。

その時は永遠に来ない。
幻太郎はずっと嘘をついたままで、
青年はずっと嘘を信じたままだ。

だから、そうならないように、もう会えなくなっても嘘をついたままにならないように、後悔しないために、
嘘をその場で明かしてしまうのかもしれないと思った。

それは同時に、相手に自分の痕跡を残さないようにする行為でもあって、
来るはずの明日には期待しないからこその行為でもあって、少し、寂しいけれど。



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*1:もし本当に青年が実在するのであればの話だが