蟹を茹でる

カニ @uminosachi_uni の雑記ブログです。好きなもののこと何でも。

オリラジ会見動画ありがとうマジで

いや~昨日「オリラジが吉本卒業した!」ってブログ書いたんですけど、もっと書きたいこと色々ある……書くわ


オリラジ会見動画ありがとうマジで

やっぱりね、会見動画なんですよ。彼らの凄まじさがまさに会見動画に表れてた。

プレスリリース当日にお互いのYouTubeチャンネルで緊急会見を録って出し、新時代すぎる。
クレバーでスピーディーでエッジがきいてる。

これぞ、これでこそオリエンタルラジオ……
いつもいつでもワクワクさせてくれる男たち。



これは本当に好きで、嬉しくて、見てもらいたいのでYouTubeを埋め込んでおきます。
よかったら見てください、でも無理にとは言いません。
彼らがきちんと自分の言葉でしっかりと経緯を説明し、問いに答えているぶん、ボリュームもあるので。

私のこの文章で、あなたに少しでも見たいと思ってもらえるよう、あなたの人生の1時間を彼らのために使ってもらえるよう、願いを込めて書きます。

【緊急会見】オリラジ吉本興業独立までの経緯(前編) - YouTube

【緊急会見】オリラジ吉本興業独立までの経緯(後編) - YouTube


こんな会見実現できるんだ

この会見の特異な点は、何より和やかな雰囲気だろう。

引き締まった空気の中でも、ほのかにリラックスできているふたり。
質問者にしっかり目線を送りながら、丁寧に順を追って経緯を説明していく中田さん。
少し緊張感が見えつつも、落ち着いて自らの選択を話す藤森さん。

各位に配慮した表現で真面目な内容を語りつつも、所々にコンビの軽い掛け合いを挟む。これが会見の雰囲気をやわらかく、温かくしている。


当人による説明は簡潔に10分弱で終わるが、そのあと50分ほど質疑応答の時間が取られる。

この質問がどれもすごく良くて、聞いててファンとして嬉しかった。
オリラジのたどってきた歴史やビジョンに理解のある人が、本当にオリラジの思いを彼らの口から聞きたくてしている質問だとわかる。

それにオリラジが言葉を尽くして、思いの丈を語る。時には中田さんが自分から踏み込んだ話をしたり、藤森さんに話を振ったりと掘り下げていく。
彼らの考えを伝え尽くせるだけの、たっぶりとした時間が取られているのも嬉しい。

司会者も質問者もオリラジの答えを遮らず、最後まできちんと受け止めた上で、次の質問をする。
質問のバリエーションは豊かで建設的。限られた時間で色んな側面から彼らの考えを知ろうとしている。


誤った噂を持ち出して困らせようとしたり、「事務所との決裂」などと決めつけて誘導しようとしたり、吉本のことばかり聞いたり、
そういった悪意や企みのある質問がないだけで、こんなに穏やかな気持ちで会見をみられるんだ、と思った。

これなら見ててもしんどくならない……
とてもいい動画だった。


会見の舞台裏

ちなみに動画の公開翌日には、卒業会見の舞台裏がアップされました。

https://youtu.be/wAnxEYWGLtI
https://youtu.be/KGwBLtZ4k3U

ここで明かされていますが、実はこの質問者たちは芸能記者ではなく、ふたりのオンラインサロン*1のメンバー。

事前募集で参加希望を出したサロンメンバーを、質問者として集めたそうです。



どうりで私が知りたいこと聞いてくれると思った!!!

それはそうだよな、質問者がファン(本物)なんだから、ファンが本当に聞きたいことが質問されるよな。
……最高か???

サロンとファンクラブを活用してロイヤリティの高いファンに集合をかけ、プレスリリース当日に卒業会見を実施、速やかに編集して当日中に、自分たちのYouTubeチャンネルでプレミア配信。

よくこんなこと思いつくな。
ずっと前から全部計画してたのか?と思いきや、初めは記者会見しようとしてたのを変更したらしい。
急に考えを変えて、それでもなおこのアイデアの練られっぷり、実に中田敦彦である……


なんてったって発想がいいよな。

事務所を退所する重大な決断をしたので、記者会見で説明しよう

待てよ、記者会見ってそもそも何のために開くんだ?

・各媒体で情報を発信してもらうため
・いつも応援してくれるファンに説明するため

じゃあ発信力があるYouTubeチャンネルで、ファンが聞きたいことを直接質問してもらおう!

斬新だけど「応援してくれるファンのため」って本質がブレてなくて誠実だし、あとなんとなく……発想が可愛い。


もちろんこれでは納得しない人(芸能記者とか、スキャンダルを期待する世間の人とか)はいるだろう。
でも、ファンのひとりとしては、とっても素敵な試みだと思った。


今ここで、彼らだからこそのやり方

これって、「オリエンタルラジオ吉本興業退所会見」だからこんなに全ての要素がうまく噛み合ったと思うんですよ。
彼らの持つ財産すべてと、「応援してくれるファンのために」がバッチリはまった。


例えば政治家の記者会見だったら、その人は国民全体に向けて説明をする責務がある。
お仲間の記者だけを呼んで会見を開いて済ませるのは、政治家の職業倫理上許されない。

それと違って人気商売の芸能人でも、謝罪会見ならその性質上、第三者からの質問を受ける方が誠実ではある。

テレビタレント活動が主戦場の芸能人なら、記者会見を通して世間の全方位に納得してもらう必要があるのかもしれない。

あるいは自前で発信力のあるチャンネルを持っていなければ、情報を伏せたままファンに集まってもらえる仕組みがなかったら、こんな会見はやりたくても実現できなかった。


オリエンタルラジオが歩んできた道が、積み上げてきた実績が、決めた覚悟が、この会見のかたちを作り上げてるのだと思うと、
やっぱりファンとしては胸が熱いんだ。


たとえファンじゃなかったとしても、あの会見の穏やかな雰囲気は、誠実で豊かな言葉は、上品さの奥に香る熱意は、
何らかの示唆をあなたに与えてくれるかもしれない。

https://youtu.be/WuJOBVst2ls
https://youtu.be/_9oeOpDu8cQ




【余談】記者必要ないねって言っちゃえる?

ここからは本当に余談です、ただ思い浮かんだことを書くだけ(ここまでもそうだった気はするが)。

この会見に関して「芸能記者はもう必要ない」が主旨の呟きをよく見かけるが、本当にそこまで言える?と少し疑問に思った。
理由を2つ挙げる。


①あの会見は特殊な条件のもと成立しているから

あの会見の形式は、オンラインサロンの存在、そのメンバーである意識と熱量の高いファンの存在により可能になったものだ。
かつ、オリラジが独自のチャンネルを持っていて、「全方位からの好感度が大事なテレビタレント」というよりファンと向き合うことに重きを置くタイプだからできる。
一般化できる範囲は慎重に考えた方がいいかもしれない。


②あの会見はオリラジの高い話術のもと成立しているから

あの質問者のよいところは少なくとも3つある。
オリラジの背景をよく理解してくれている点、
ファンが本当に気になっていることを聞いてくれる点、
オリラジの言葉をしっかり受け止めて次の質問をしてくれる点。
(さすがファン! 本当にありがとう!)

これはマジでもうめちゃくちゃ良いので、色んな会見に反映されてほしい……


一方で彼らはプロではなく、技術面は記者とは違っている。質問の聞こえやすさとか、質問文の簡潔さと抽象度のバランスとか、答えを引き出すテクニックとか。
あとオリラジに愛があるので、踏み込んだ質問はできても悪いことは聞きにくい。

今回はそのあたり、オリラジがトーク力でカバーしていたのが凄かった。

ファンの質問から聞きたいことを汲み取り膨らませ、分かりやすく情感豊かに答え、必要なら自分たちで話を振る。自ら質問を掘り下げ、踏み込んでみせる。

うかつに答えにくい宮迫さんの話題にも精一杯答えつつ、笑いを交えてうまく線引きをしたり。
ファンが気にしてそうなことは、自主的に話題に出してくれたり。
中田さん、たぶんファンがとびちゃんのこと気にしてると考えてか、マネージャーの話題を藤森さんに振ってくれていた。

もしも回答する側が口下手だったら、質問者が温かいファンでもここまで充実した会見にはならなかったと思う。
そこを補って答えを引き出すのが、記者の本分なのだろうし。(芸能記者による極端に悪意ある質問は問題、という意見には同意)



とはいえオリラジがあんなに面白く、たくさん、内実を明かして喋ってくれたのは、たぶんファンのおかげでもある。

ファンは彼らを傷つけるつもりはないし、揚げ足をとる気も、困らせる気もない。素直に聞きたい気持ちを表出している。オリラジの言葉をからだ全部で受け止める用意がある。
ふたりにとってファンは味方だ。

だからこそ彼らは自己防衛的な気持ちにならずオープンマインドでいられて、質問に対して正直に全力で答えてくれたのかもしれない。

お互いがビジョンを共有してて、リラックスした明るい雰囲気で、警戒して身構える必要もないと、充実した答えに全部のパワーを注げるんだなーと感じた。


【余談】オリラジの武勇伝をご覧ください

これは会見とは全然関係ないオリラジほのぼの動画(藤森慎吾チャンネル登録50万人記念)なんですけど、
https://youtu.be/gji2HaEFYqc

タイトルがめちゃめちゃエモい。

自己紹介として上げるのがこんな仲良し動画ってもう可愛いが過ぎる。

しかも、「オリエンタルラジオです!お願いします!」はズルい。
それはつまり、『これからオリエンタルラジオの武勇伝が始まります』という合図だから。

*1:オリラジファンクラブUNITED/中田敦彦サロンPROGRESS/藤森慎吾サロンFILLLLAGE

推しが事務所から独立した

12/28の午後4時、オリエンタルラジオが年内で吉本興業を退社することが発表された。
中田敦彦・藤森慎吾両氏による独立である。





推しが芸能事務所から独立した。





普通なら、薄々予測していてもかなりショックな事態だと思う。
でも、このニュースを見たとき、不思議と不安な気持ちはなかった。
(めちゃくちゃ驚きはした。「えっ!!!」ってでかい声出してしまった)

なぜかといえば、それは彼らが「オリエンタルラジオ」だから。

たぶん、彼らなら所属を変えても、活動場所を変えても、自分たちの力でうまくやっていけるだろう。これからもふたりにしかない輝きを見せてくれるだろう。
そう思えるだけの活躍を、ずっと見せ続けてくれたコンビだ。信頼を託せるだけの情熱と能力を、ずっと証明し続けてきたコンビだ。



しかも、独立するのが中田敦彦だけじゃなくて、藤森慎吾含めた「オリエンタルラジオ」だってことがもう本当に心強い。

きっと事務所を退社するのがあっちゃんだけだったら、ファンのこちらも色々戸惑ったし不安になったかもしれない。
片方だけ独立したらふたりの関係やオリラジの活動はどうなるの?とか、あっちゃんがネットニュースで悪いように書かれないかなとか、慎吾さんがどんな立場に置かれるのかなとか。

でも、藤森慎吾は中田敦彦に着いていく覚悟を決めてくれた。オリエンタルラジオとして独立することを決めてくれた。

だったらきっと大丈夫だと思える。
だったらふたりのファンとして決断を応援するしかないなと、思わせてくれる。



正直ファンとして、慎吾さんも一緒に独立したのはちょっと意外だった。

慎吾さんはあっちゃんに比べれば、安定も好むタイプの人だ。
※ただしこれは『あの中田敦彦に比べれば』という話であって、一般平均からしたらあの中田敦彦に着いていけてる時点で相当変化に強い人だとは思う

そして何より彼は、キラキラした芸能界や華やかなテレビの世界が本当に大好きな人だ。それはオリラジがトークするときいつも、彼自身の口から語られていた。

これまでずっと中田敦彦の最強のフォロワーであり続けた藤森慎吾が、あっちゃんの「テレビのレギュラーを整理してYouTubeに新天地を求める」という選択だけは追いかけず、ひとりでレギュラー出演を続けたくらいだ。
(その後色々起きた結果、彼はテレビ出演を継続しながらYouTubeに参入することになるのだが)

そんな藤森慎吾が、「あっちゃんと一緒なら」と独立を決意した。
テレビのレギュラー出演が続けられなくなる可能性も考慮した上で、それでも。

オリラジふたりのファンとして、こんなに嬉しい想い他にある??



しかも半月という短い期間で相方とともに独立することを決断したらしい。決断力すごすぎない?
こんなもんもう崇めるしかなくない?
藤森慎吾の独立、「決断力がすごすぎるさま」を表す慣用句にしようよ。弁慶の勧進帳みたいな感じで



円満退社吉本興業も今後の活動を応援してくれていること、慎吾さんがこれからもレギュラー出演を続けられると決まったこと、本当に本当に嬉しさしかない。よかった。

これからもオリエンタルラジオを応援していきます。ふたりの活躍を追いかけていきたい。
これからも、オリラジには自分たちらしい活動を続けていってほしいし、きっと続けてくれるはずだ。

ショートコント12月号@空中キャラバン

@kuuchuucaravan として、Twitterにショートコントを上げてるのでよかったらみてね。フォローやリツイートも大変嬉しいです。
出てくれる人、技術的なアドバイスくれる人も大募集しています。


12月のショートコント

最初にアップしたネタです。
宗教勧誘の人が使うノウハウ「水道局のほうから来ました(水道局から来たとは言っていない)」をもとに作りました。

本来は信用させて扉を開けてもらうために身元を偽るらしいのですが、「それのふりしても扉開けてもらわれへんやろ」というのをチョイスしてしまっています。

元ネタがあんまり有名じゃなかったのと、ツッコミをかなり複雑にしてしまったためか、見てくれた友人に「なんでツッコミ水道局なん?」と聞かれました。


見たまんまのネタです。新婚のテンプレ。
3択のようで選択の余地がない形式もお約束の一種なので、テンプレ×テンプレの組み合わせです。

よく考えたらご飯とお風呂どっちか選ばせる、ってどういう状況なんだろう。選ばれなかった片方は冷めますよね。温め直せばすむからいい、との判断なのか?

あれか、ごく最近同居を始めたからまだ2人のあいだで生活上のルーティーンが共有されていない、という情景を描いているんですかね。うちの家はご飯食べてからお風呂入るねん、という認識がまだ出来上がっていない時期の。そう考えるとなかなかエモいかもしれないですね*1

テンプレは多くの人が知っていますし、型が決まってるぶん改変もしやすいです。我々素人が初めてショートコントつくるときは、まずテンプレを探すのが近道な気がします。


これも新婚のテンプレ。
たぶん喧嘩したとか仲悪いとかではなくて、単純に個人行動が好きなんだろうなこの人。
「お風呂入るときにバッティングしたらあかんから」という善意でやってそうな気がする


ご近所さんから作りすぎちゃった肉じゃがをおすそわけされるテンプレ
を、『作る』を支点に改変しました。

妊娠出産活動を子作りと呼ぶ派・子どもは授かるもの派がいるじゃないですか。子作りは一般的な言葉だし、責任重大なぶん計画的に行うもの当たり前ですけど、確かに人間に『作る』が使われる場面、他にはあまりない。

元々はこれを1本目に上げる予定だったんですけど、さすがにこれ初回はパンチ強すぎると思って順番変えました。


やや心残りなのは、演者2人のジェンダーが異なる点です。ネタの印象に意図せぬ含みを持たせてしまいそうで、できればニュートラルに見せたかったです。

男性→女性だと現代日本の状況*2ではあまりにも象徴的すぎて、なにがしかの隠喩に見えてしまうおそれがあったため、より現実で起こりにくそうな女性→男性のシチュエーションにしました。


今後もショートコントをアップしていきますのでよろしくお願いします。
ブログもちゃんと書きたいです。

*1:もちろんエモとは別枠で、ジェンダーステレオタイプの問題などはありますが

*2:性教育や性的自己決定権の軽視、若年妊婦に対する偏見、アウトリーチやサポートの少なさ、アフターピルの認可を阻む意味不明な理屈、父親の許可がないと中絶手術ができないと思い込んでいる産婦人科医、相手に望まない妊娠をさせて逃げても、中絶の手段さえ奪って相手を死産や死体遺棄に追い込んでもリスクのない立場の人が存在することetc.

M-1グランプリ2020最終決戦 感想

予選ラウンド↓



最終決戦↓

見取り図

織田信長→ドアノブカバーとか、変なポーズ→「俺ってモハメド・アリなんかなぁ?」とか、ちょっと引っ掛かりを生んでからツッコミで答え出す流れが上手いですね。
ツッコミの人、漫才以外の場面でもあのキャラクターで活躍しそうだな……関西のロケ番組とか出てるんだろうか。

コテコテの上方らしいしゃべくり漫才スタイルは、「漫才らしい漫才」を自分たちなりに追求していった到達点なのかもしれない。
わりとゴリゴリにあらゆる偏見をポンポン放り込んでくるので、悪い笑いが好きな人にはウケると思う。

個人的には「文句あるなら大阪から出ていけ!」ってツッコミが気になってしまった……
たぶん普段は大阪でネタやってるんだろうけど、M-1の舞台は東京なので微妙に違和感があった。なんば花月では成り立つ地元vsよそ者の構図が、東京では両方よそ者になってしまい、崩れている。
それと、前提のボケは色々な都市(岡山以外)を引き合いに出してても大阪に直接文句言ってたわけじゃないので、「自分の地元で戦えや」方面のツッコミを待ってしまってた。


色々な意味合いで、今現在の大阪のあり方を象徴している漫才師だと思う。

マヂカルラブリー

1本目は導入を丁寧に振ってたけど、2本目は「吊革に捕まりたくないよ!」→「その感じ見てて」とハイスピードで本筋に突入。
予選でお客さんが仕組みに慣れたから、決戦は最初からフルスロットルでぶっぱなせるんだな。あんなにエキセントリックなスタイルなのに、お客さんの立場にたった調整がなされてるのすごい。

耐えれてないのに意地でも吊革持たない人(あるあるネタ)の描写から、シームレスに「ありえないくらい揺れる電車」に主題がシフトしていくの上手いな……自然にこっちの見方も切り替わっていく。

世界観が空想的なんだけど、「箱根登山鉄道でもこんなに揺れないよ」と固有名詞を出すことで現実に接続してくれてるから、なんか展開についていけちゃう。
現実世界のものと比較してくるの、想像つきやすくなって上手いな……

車内販売のくだりで何もかもハチャメチャになってるところ声出して笑いました。何でサンドイッチ買えると思ったんだよ。あれと「お客さんめっちゃ倒れてんじゃん」で他者の存在が示されるのもいいですね。


「あんなの漫才じゃない!」的な声もあるだろうけど、やっぱり自分は漫才だと思った。
あのネタの面白さは漫才でしか成り立たない。

まず野田さんの大暴れは完全パントマイムだからこそあんなに面白い。
そして、空想世界で大暴れする野田さんに、村上さんが現実世界から実況形式でバシバシツッコミを入れるのが面白い。
「世界の外側からメタ的にツッコむ」構造は、コントではなく漫才だからこそ、ピンではなくコンビだからこそ実現できる面白さなのだ。

漫才は「べしゃり」だと言うのなら、村上さんの実況ツッコミは確実に話芸の域だった。
漫才は「掛け合い」だと言うのなら、ふたりの間には(会話形式ではないけど)互いのおかしみを引き出しあう相互作用があった。

いわゆる「漫才らしい漫才」らしさはなかったかもしれないけど、定義をきちんと設定して論じる気があるなら、あれはやっぱり漫才だという結論になるだろう。
あと、M-1は昔からテツandトモが決勝出たり、オリエンタルラジオが武勇伝で準決勝進出したりしていて、間口はかなり広いのだ。

おいでやすこが

おいでやす小田さんの落ち着いたおじさん芸人らしい喋り方、哀愁あってすごくいいですね。このあとめちゃくちゃキレるのわかってるから落差でじわじわくる……。

たっぷり歌わせて泳がせてからの初手「覚えられへん!!」、ワードチョイスが適切すぎてめちゃめちゃ面白い。
「長いわ!」とか「いつまで歌うねん!」より前に覚えられへんことが気になるところ、ちゃんと歌が苦手な人のリアクションだ……

こがさんずっと詰まらずに歌い続けてられるの地味にすごいな。肺活量と歌のうまさどうなってるんだ?

ずっと機械的に歌を歌い続けるやつの狂気、みたいなのがちょいちょいかいま見えるのが好きでした。「聞こえてるやろ?」「はい」のところ特に良い。歌いながら「はい」挟み込むとあんなに怖くなるんだ……
歌いながら謝ってくる感情のわからなさも良い。自分でも自分が歌うの止められないってことなの?
だんだんコントロールがきかなくなってこがさんが歌う装置と化していくの、ほんのり奇妙で心惹かれた。

一旦落ち着いた声で溜めてからの「ジュークボックスか!」でしっかり爆発が起きてるのもすごい。ちゃんとここにピークを持ってくることを考えて設計してある……
ラストに1本目のネタちょっと入れてくれたのもアツかった。





今年もM-1に出た芸人さん全員面白かったです。
マヂラブ優勝おめでとうございます。

M-1グランプリ2020 感想

決勝の感想(最終決戦は別記事)

インディアンス

敗者復活組がいきなりトップバッター! 正直気持ちの準備する時間なんかなかったと思うけど、しっかりエンジンかかっててさすがプロだなと思った。
パワー系のボケで場をあたためていける人たちだと思う。そう考えるとトップバッター適性あったよね。

ボケが次々繰り出されて止まらない。ツッコミの言い間違いをつついてボケに展開していく構成とか、ボケ数を増やす工夫がされててすごい。アドリブ演奏みたいなリズム感とスピード感。
「うるさいねん!」のタイミングがぴったり。

東京ホテイソン

同世代やん……SNSで出会ったコンビとか、めちゃめちゃ今っぽいな。
この人たち着眼点とワードセンスが卓越してるなーと思う。ワードの珍妙さがまず面白いし、ツッコミの人のやたらダイナミックな言い方が跳躍力をプラスする。うまいんだけど力技で笑わせてくるみたいな、独特なパワーがある。
ツッコミの人の声、特徴的でいいな。ボケの落ち着き具合とのバランスも素敵。ただM-1の場では若干ふたりの声量の違いは気になった。

テーマが謎解きなの、攻めてるなー。この場であえて複雑なことをやる!
こっちが暗号を解こうと頭を働かすと、それを上回る速さでツッコミが入る(答えが提示される)。すると、暗号を解くための認知的資源が余剰となり、笑いのエネルギーとして解放される。
ただ巨人さんの指摘もごもっともで、人によっては置いてきぼりに感じるかも。あと、あらかじめボケを知ってないとあの速さで答えを出すのは絶対に不可能なので、そういう意味で自然な掛け合いじゃないと評価されたのかな。

圧倒的なスピード感と答え合わせの爽快さ、ジェットコースターのようだった。ある意味行き急いでるところに若さを感じて個人的には好きでした。

ニューヨーク

ほんとにこなれた漫才する人たちだな……器用で上手。
目のつけどころが「コンプラ」で、細かい犯罪のデパートになってるのがニューヨークらしい小さな悪意に満ちてる。

こんな悪い笑いなのに、取り上げる犯罪をヤバくしすぎないで変なとこで善行させるとか、あくまで悪いことをツッコミが指摘する立場をとるとかで安全策とってるバランス感覚もすごい。こなれてる~!
なんていうか、「スクールカースト高めの人の性格悪さ」って感じ。立ち回りがうまい。ウエストランドとはまた全然性質が違うな。

塙さんのコメントで気づいたけどこれ時事ネタなんだな……そう考えるとすごい。細かい時事ネタを拾ってきれいにまとめあげてる。

見取り図

マネージャーのネタ。ツッコミの盛山さん、ハチャメチャに振り回されて文句言ってるのが映える人だなあと感じた。
ボケのレパートリーに自由度があって、いろんな種類のボケを繰り出してくる。でもうまいこと伏線を張ってたりして、内容にしっかりまとまりもある。4分間の枠組みの中でネタが練り上げられていて、きっちりM-1用に仕上げてこられたんだなと感じた。ここに賭けてるんだな。

そして、そのネタを漫才師としての力量が支えている。ふたりとも上手い。スタイルは(特に盛山さんは)往年の上方漫才師な感じ。

おいでやすこが

ピン芸人の即席ユニット! 芸歴制限でピンの大会出られなくなったふたり。マジで今後報われてほしい。

こがさんの歌うっまいな~と思いながら見てたら、小田さんのキレ方の爆発力に全部持っていかれた。シンプルにめちゃくちゃ笑った。
シュールなボケとキレ芸の落差ったらないのに、相性が最高なんだよな。キレ芸なのに絶妙に怖くないのも良いところだ。

掛け合いの巧さってどうしてもコンビ経験に依る部分があると思う。同じコンビでずっとやってるうちにチューニングが合っていくというか。
でもこのふたりは個々の得意技をモジュールとして組み合わせるかたちで成立させてるので、ピン芸人の即興コンビならではの面白さになってる。
M-1もう16回目でまだこんな発明的なやり方あったんだ。

マヂカルラブリー

つかみ「どうしても笑わせたい人がいます」最高だった。それも含め、色々の顛末やキャラクターを知られてることが、すごくプラスに働いていたと思う。
彼らはキャラを知っててこそ面白いというか、もうボケる前から絶対変なことしてくれるって期待できる。しかも手の内はもうだいたい知ってるはずなのに、実際ネタ見てみたら全然想定を越えてくる。

マヂラブらしいパワフルなスタイルで、場を荒らしまくっていったのが良かった。
細かいことを言うと、最初の場面設定までを丁寧に振って、漫才内コントの終わりの合図(食器を斜めに置くジェスチャー)を設定してるところがうまかった。あれのおかげで要所要所が締まって、ネタが見やすくなってたと思う。

オズワルド

ツッコミが言い方もワードセンスも独特で印象に残る。あの空気感いいな。
ボケの応答が微妙にズレるところが特に好きで、
「絶対入れられないよ」
「試合前のゴールキーパーはみんなそう言うんだよ」
「今は雑魚寿司の話だろうが!」
のやり取りにめちゃめちゃ笑った。

どんどん奇妙なシチュエーションのありえない話になっていくんだけど、いきなりぶっ飛ぶんじゃなく、少しずつズレが積み重なって話が変な方向に傾いていく感覚が面白い。

後半に向けてテンション高まっていく構成、賞レースに合わせた調整で上手いなーと思ってたけど、プロの審査ではウケがよくなかったみたい。
もっと個性を通すか、もっと漫才らしい漫才にするかを求められたのかな。

アキナ

山名さんの喋り方が初っぱなから「口では迷惑言うてるけど嬉しくてしゃあないやつ」そのものでリアル。漫才内コントでキャラを演じるだけでなく、『キャラを演じた状態で漫才をやっている』。
山名さんは「好きな女を意識してイキってる漫才師」を演じてネタを進行している。そこからさらに漫才内コントでの演技が重なる。
秋山さんのツッコミはそれに呼応して、ボケにツッコんでいると同時に、「イキってる漫才師」キャラへのツッコミになっている。
なんかよく見るとかなり複雑で多層的なことをやろうとしている。

ただM-1の特性上、ネタのためにキャラクターを演じる漫才(キャラ芸人のことではなく、ジャルジャルの「続き知ってるから飽きた漫才師」みたいなメタ系)あんまりハマらないのかな。

構造が複雑な一方、題材はベタに「女の子にええかっこしたい」。これ、ほぼ同じ内容でシチュエーションが「親が見に来るから良い所見せたい」「子供が見に来るから格好いい姿を見せたい」とかのほっこり系だったらまた印象違ったんかな。
微笑ましさが乗っかると、聴衆の受け止め方も変わりそう。個人的にはその方が今っぽいと感じる(今風じゃなきゃいけないわけじゃないが)

錦鯉

M-1にまさかのパチンコネタ。とにかく構成もボケもシンプルで、明るくて分かりやすくて元気。
同じギャグを3回やってたので耳に残っている。

シンプルすぎて逆にどう受け止めていいか最初わからなかったけど、フォロワーの感想見て合点がいった。
錦鯉は、明るいおじさんがとにかく元気に変なことを全力でやってくれる、こっちはそれを何も考えないで楽しむ、そういうコンビなんだな。きっと老若男女関係なく笑えるし、安心感があるんだ。

賞レースに向けた調整とかをあまり考えず、自分たちらしさを出しきってたのがすごい英断だと思う。

ウエストランド

ツッコミの井口さん、己のいびつさを剥き出しにしていく攻撃的な漫才スタイル。
いきなり不倫ネタを淡々とぶっこんでくるあたりからして、「賞レースの場でもひよらず、自分らしさ全開でいくぞ!」って気概を感じました。
そういうユーモアが好きな層にはウケるだろうな。

自己言及のところ(悪口漫才師、復讐劇)は面白かったです。身を削ってる……
つかみは「マッチングアプリに詳しい」だったけど、内容はわりと井口さんの空想上の女子像の話だったな。実体験が入ってればまた違った印象になったかも?



ちなみに一番笑ったのはおいでやすこがでした。

つづき

ショートコント、はじめます。

大学時代の友人と、ショートコントをはじめることになりました。
ここ数年の悲願が現実になりそうで、わくわくしています。

フォロー&リツイートしていただけるととっても嬉しいです。

豆知識が身につくショートショート【動物の名前編】

鳴き声と名前の関係

「やっぱりポケモンGoだ」
いきなり背後から声がして振り向くと、李花がこちらの手元を覗き込むように立っていた。

「人のスマホ覗かないでよ。行儀悪いよ」
「それはごめん、つい……」
李花が両手を合わせて言った。ふだんは軽率で調子がいいが、謝るときだけはしおらしい顔だ。

「でも、離れて見ててもわかったよ。独特な動作だから」
指をくるくると回してから、弾くように動かす。その動きが何を指しているかは、優吾にもわかった。

駅出口の階段を上りながら、李花が話しかける。
「優吾は好きなポケモンとかいるの?」
「あー、まあバトルで使うやつとか、ビジュアルが好きなのとかいろいろいるけど……」
優吾は一瞬だけ思考をめぐらせて、言葉をつぐ。

「まあ、ピカチュウかな。定番だし」
「へえ。かわいいし、わざもいいよね。初期からいるキャラだし」
「子供の頃はアニメも見てたよ」
「ちょっと前だけど、洋画にも出てなかった?」
「あー、あれはとにかくピカチュウが可愛かったな……世界観もよかったし」
「へえ。今度見てみようかな」

彼女が今度やると言ったことは、たいてい翌月には達成されている。裏を返せば、あまりお世辞でそういうことは言わない。

「そういえば、ピカチュウは『ぴかちゅう』って鳴くからあの名前なのかな」
優吾の子供の頃からの疑問である。

「あの世界の中ではそうなんじゃない? 鳴き声が由来で命名されたのかも」
「へー、そういうのって現実にありうるの?」
李花ならばこういうことも知っていそうだ。

「実はけっこうあるよ。例えば優吾も知ってるセミにも」
「……あっ、ミンミンゼミ?」
「そうだね。それにツクツクボウシも」
「言われてみれば……」

「鳥でも、カッコウはまさに『カッコウ』って鳴くよね」
考えてみれば当たり前なのに、なぜ優吾は今まで気づかなかったのか。

「あとは鳥のブッポウソウも、鳴き声が由来」
「『ブッポウソウ』って鳴く鳥がいるの?」
「昔の人にはそう聞こえたんだろうね」
優吾にとっては初めて聞く名前だった。鳴き声としても奇妙に感じる。

ただ、鶏の鳴き声も言語によって表現が違うくらいだから、今と昔で感じ方が違うのは当たり前かもしれない。

「なるほどな……」
「でもブッポウソウは『ブッポウソウ』とは鳴かないけどね」
ブッポウソウは『ブッポウソウ』とは鳴かない!?」

李花が前言を翻すようなことを言うので、優吾は思わず復唱してしまった。
鳴くから名前がついたのに、鳴かないとはどういうわけか。

「『ブッポウソウ』って鳴くの、本当はコノハズクっていう別の鳥なんだよ。昔の人は勘違いして、ブッポウソウの声だと思ったんだろうね」

鳴き声が由来で名前がついた鳥なのに、鳴き声も違うとは、優吾には何とも不思議な話に感じられた。

「じゃあ、本物のブッポウソウはどんな声で鳴くの」
「……グェッ」

李花は喉を押し潰したような声をあげた。
ワンテンポ遅れて、それが声真似だと理解した優吾は笑った。本物を聞いたことはないけど、きっと似ているのだろう。



「でも虫や鳥ではよく聞くけど、哺乳類では珍しいかも」
「そうなの?」
「強いて言えば、『猫』の漢字は鳴き声から来てると聞いたことがあるな。苗の音読みは『びょう』でしょ」
「確かに」

「私が知らないだけで、他にもたくさん例がありそうだけど。うーん、哺乳類ね……」
李花はややうつむき加減で記憶をたどっている。
歩道のうしろから自転車が近づいてきたので、優吾は考え込んでいる李花をそっと誘導する。

優吾自身にも理由はわからないが、そのときふと、ある名前がひらめいた。
「あ、ティトー*1
「ティトー!」

今度は李花が、感心した声で復唱する。
「確かに哺乳類ではあるもんね、ユーゴスラビアの政治家」

*1:本名はヨシップ・ブロズ。口癖からその名がついた